事業承継税制研究室持株会社化と事業承継税制

背景

平成30年の税制改正により、「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」(以下、「事業承継税制」という)の適用可能性が大きく広がった。もはや、事業承継を考える際に、事業承継税制の適用を考えないことはない。

しかし、事業承継税制の適用を受けるための手続きは煩雑で、納税猶予の適用を受けている期間には継続的に届出書を提出する必要があり、この届出書の提出を失念した場合には納税猶予がきれ、納税が発生してしまう。

このように、事業承継税制の適用を受ける場合は常に「届出書提出失念リスク」が付きまとうため、事業承継税制の適用を考える場合、企業グループ全体では適用対象会社はできるだけ絞り込んだほうがいいということになる。

持株会社化の円滑化法の考え方

中小企業庁に公表されているマニュアルによると、持株会社化(マニュアルにおいては組織再編と表現)の取り組みについて以下のように記載されている。


特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者が合併により消滅した場合にいかなるときも認定の効力が消滅することとすると、合理的な企業行動を阻害するおそれがあるからです。


このように、円滑化法上の基本的な考え方においても、持株会社化を禁止するものではない。

たとえ持株会社である場合でも、その実態が中小企業であり(上場会社でなく)、地域の雇用をみたし、日本の技術を維持すべく「守らなければならない会社」である場合には、納税猶予が認められるのである。

検討しなければならない場合とは

事業承継税制と持株会社化を考える上で、納税猶予に影響がでるのは、認定を受けた会社が組織再編行為により「子会社となる場合」又は「合併により消滅する場合」などである。

つまり
・認定を受けている会社が株式交換完全親会社になる場合
・認定を受けている会社が吸収合併をする際の合併法人である場合
などの場合、基本的に納税猶予の影響を考える必要はない。(以下、このような場合を「親会社等となる場合」と表現する)

 

これらの場合、認定を受けている会社の構成が大きく変わるため、納税猶予を継続して適用するかどうがの判定が必要となる。

ただし、親会社等となる場合でも、持株会社化の際に後継者の議決権割合が50%未満となる場合など、通常の取り消し要件に該当する可能性もあるため注意が必要である。

持株会社化により該当する可能性のある取り消し要件

持株会社化を行う際に気をつけるべき要件は下記の通りである。


・後継者が同族株主グループにおける筆頭株主でなくなった場合

・資産保有型会社、資産運用型会社に該当することとなった場合

・資本金又は従業員数が中小企業者の要件を上回ることとなった場合


このように、基本的に問題となるのは認定を受けている会社が子会社になる場合、又は合併により消滅する場合である。

 

上記の場合には、原則的には認定は取り消され、納税が発生する。

ただし、上記のマニュアルに記載されているとおり、すべてを禁止してしまうと「合理的な事業行動を阻害」してしまう可能性がありるため、一定の要件の元、組織再編行為を認めている。

組織再編行為を行った場合の届出

認定会社が組織再編行為を行った場合には、各組織再編行為を行った日の翌日から1か月以内にその旨を都道府県知事に報告しなければならない。

報告するための様式は「様式第12」であり、中小企業庁WEBサイトに公開されている。

また、組織再編行為の種類により、さらに報告書の提出が必要となる。

・合併の場合・・・様式第13
・株式交換・株式移転の場合・・・・様式第14

※中小企業庁WEBサイトはこちら

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