(1)完全支配関係がある法人間で行われる当初の組織再編成の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合における当初の組織再編成に係る株式の保有関係に関する要件の見直し
完全支配関係がある法人間で行われる合併、分割、現物出資、株式交換及び株式移転(以下「合併等」といいます。)の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、次のとおりその合併等の時からその適格株式分配の直前の時までその合併等に係る支配株主とその適格株式分配に係る完全子法人とされる法人との間にその支配株主による完全支配関係が継続することが見込まれていれば、その合併等に係る適格要件のうち完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件に該当することとされました。
①合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係がある合併
合併後にその同一の者と合併法人との間に完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、合併後にその合併法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その合併の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ②二)。
②分割前に分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある吸収分割(中間型分割に該当しない分割型分割を除きます。)
分割後にその分割法人と分割承継法人との間にそのいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、分割後に他方の法人(その分割法人及び分割承継法人のうち、そのいずれか一方の法人以外の法人をいいます。)を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令4 の 3 ⑥一ロ)。
③複数新設分割のうちその複数新設分割前に分割法人と他の分割法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があるもの(他方の法人(その分割法人及び他の分割法人のうち、そのいずれか一方の法人以外の法人をいいます。)が分割対価資産の全部をその株主等に交付した法人である場合に限ります。)
複数新設分割後にそのいずれか一方の法人と分割承継法人との間にそのいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、複数新設分割後にその分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その複数新設分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の3 ⑥一ニ⑴)。
④複数新設分割のうちその複数新設分割前に分割法人と他の分割法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があるもの(上記③を除きます。)
複数新設分割後に他方の法人(分割法人及び他の分割法人のうち、いずれか一方の法人以外の法人をいいます。)と分割承継法人との間にそのいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、複数新設分割後にその他方の法人又は分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その複数新設分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3⑥一ニ⑵)。
⑤吸収分割型分割(中間型分割を除きます。)のうちその分割型分割前に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
分割型分割後にその同一の者と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、分割型分割後にその分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その分割型分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑥二イ)。
⑥吸収分割(上記⑤の吸収分割型分割を除きます。)のうちその分割前に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
分割後にその分割法人と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、分割後にその分割法人又は分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その分割の時から適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令4 の 3 ⑥二ロ)。
⑦単独新設分割(中間型分割以外の分割型分割に限ります。)のうちその単独新設分割後に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
単独新設分割後にその同一の者と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、単独新設分割後にその分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その単独新設分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑥二ハ⑴)。
⑧単独新設分割(上記⑦の単独新設分割を除きます。)のうちその単独新設分割後に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
単独新設分割後にその分割法人と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、単独新設分割後にその分割法人又は分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その単独新設分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑥二ハ⑵)。
⑨複数新設分割のうちその複数新設分割前に分割法人と他の分割法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
複数新設分割後にその分割法人及び他の分割法人(それぞれ分割対価資産の全部をその株主等に交付した法人を除きます。)並びに分割承継法人とその同一の者との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、複数新設分割後にその分割法人、他の分割法人又は分割承継法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その複数新設分割の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑥二ニ)。
⑩現物出資前に現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある吸収現物出資
現物出資後にその現物出資法人と被現物出資法人との間にそのいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、現物出資後に他方の法人(その現物出資法人及び被現物出資法人のうち、そのいずれか一方の法人以外の法人をいいます。)を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その現物出資の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑬一イ)。
⑪複数新設現物出資のうちその複数新設現物出資前に現物出資法人と他の現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があるもの
複数新設現物出資後に他方の法人(その現物出資法人及び他の現物出資法人のうち、そのいずれか一方の法人以外の法人をいいます。)と被現物出資法人との間にそのいずれか一方の法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、複数新設現物出資後にその他方の法人又は被現物出資法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その複数新設現物出資の時から適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑬一ハ)。
⑫吸収現物出資のうちその現物出資前に現物出資法人と被現物出資法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
現物出資後にその現物出資法人と被現物出資法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、現物出資後にその現物出資法人又は被現物出資法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その現物出資の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑬二イ)。
⑬単独新設現物出資のうちその単独新設現物出資後に現物出資法人と被現物出資法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
単独新設現物出資後にその現物出資法人と被現物出資法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、単独新設現物出資後にその現物出資法人又は被現物出資法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その単独新設現物出資の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑬二ロ)。
⑭複数新設現物出資のうちその複数新設現物出資前に現物出資法人と他の現物出資法人との間に同一の者による完全支配関係があるもの
複数新設現物出資後にその現物出資法人、他の現物出資法人及び被現物出資法人とその同一の者との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、複数新設現物出資後にその現物出資法人、他の現物出資法人又は被現物出資法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その複数新設現物出資の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑬二ハ)。
⑮株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に株式交換完全親法人による完全支配関係がある株式交換
株式交換後にその株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間にその株式交換完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式交換後にその株式交換完全子法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式交換の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の3 ⑱一)。
⑯株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による完全支配関係がある株式交換
株式交換後にその同一の者と株式交換完全親法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式交換後にその株式交換完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式交換の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑱二イ)。
株式交換後にその同一の者と株式交換完全子法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式交換後にその株式交換完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式交換の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑱二ロ)。
また、株式交換後にその株式交換完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、株式交換後にその株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間にその株式交換完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることを要することとされました(法令 4 の 3⑱二ニ)。
(注)株式交換後にその株式交換完全子法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その株式交換の時からその適格合併の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば足りることとされています(法令 4 の 3⑱二ニ)。
⑰株式移転前に株式移転完全子法人と他の株式移転完全子法人との間に同一の者による完全支配関係がある株式移転
株式移転後にその同一の者と株式移転完全親法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式移転後にその株式移転完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式移転の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ○21一)。
移転後にその同一の者と株式移転完全子法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式移転後にその株式移転完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式移転の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ◎21二)。
株式移転後にその同一の者と他の株式移転完全子法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式移転後にその株式移転完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式移転の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ○21三)。
また、株式移転後にその株式移転完全親法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、株式移転後にその株式移転完全親法人とその株式移転完全子法人及び他の株式移転完全子法人との間にその株式移転完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることを要することとされました(法令 4 の 3 ○21五・六)。
(注)株式移転後にその株式移転完全子法人又は他の株式移転完全子法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その被合併法人となった株式移転完全子法人又は他の株式移転完全子法人との間については、その株式移転の時からその適格合併の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば足りることとされています(法令 4 の 3 ○21五・六)。
⑱単独株式移転
株式移転後に株式移転完全親法人と株式移転完全子法人との間にその株式移転完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていることとの要件について、株式移転後にその株式移転完全子法人を完全子法人とする適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、その株式移転の時からその適格株式分配の直前の時までその完全支配関係が継続することが見込まれていれば、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ○22)。
(注)上記①の同一の者、上記②から④までのいずれか一方の法人、上記⑤から⑨までの同一の者、上記⑩若しくは⑪のいずれか一方の法人、上記⑫から⑭までの同一の者、上記⑮の株式交換完全親法人、上記⑯の同一の者若しくは株式交換完全親法人、上記⑰の同一の者若しくは株式移転完全親法人又は上記⑱の株式移転完全親法人を被合併法人とする適格合併(上記⑯の株式交換完全親法人又は上記⑰の株式移転完全親法人を被合併法人とする適格合併にあっては、上記⑯又は⑰の同一の者とその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある場合におけるその適格合併に限ります。)を行うことが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人をこれらの法人とみなすこととされています(法令 4 の3○25)。
(2)従業者従事要件及び事業継続要件の見直し
①従業者引継要件又は従業者継続要件
支配関係がある法人間の組織再編成及び共同で事業を行うための組織再編成に係る従業者従事要件(従業者引継要件又は従業者継続要件)について、次のとおり見直されました。
イ 合併
合併に係る被合併法人のその合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者がその合併後にその合併に係る合併法人の業務(その合併後に行われる適格合併により被合併事業(被合併法人のその合併前に行う事業のうち主要な事業をいいます。以下同じです。)がその適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人の業務を含みます。)に従事することが見込まれていることとの要件について、この「合併に係る合併法人の業務」には、その合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務及びその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含むこととされました(法法 2 十二の八ロ⑴、法令 4 の 3 ④三)。
「合併法人との間に完全支配関係がある法人」は、被合併事業を行う法人に限定されていません。したがって、被合併事業の移転先以外の法人であっても完全支配関係がある法人であればこれに該当します。また、「含む」こととされているので、被合併法人の従業者の80%相当数が 1 つの法人の業務に従事する必要はなく、当初の合併に係る合併法人、その合併法人との間に完全支配関係がある法人、当初の合併後に行われる適格合併に係る合併法人及びその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務に従事する者を合計して判定することになります。なお、当初の合併に係る合併法人を経由せずに直接、その合併法人との間に完全支配関係がある法人、当初の合併後に行われる適格合併に係る合併法人及びその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人に異動した者も含めて判定することになります。
また、「合併法人との間に完全支配関係がある法人」は、合併後に新設されることが見込まれる法人や被合併法人の完全子会社で合併により合併法人の完全子会社となるものであっても該当します。
ロ 分割及び現物出資
分割の直前の分割事業(分割法人の分割前に行う事業でその分割により分割承継法人において行われることとなるものをいいます。以下同じです。)の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者がその分割後に分割承継法人の業務(その分割後に行われる適格合併により分割事業がその適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その合併法人の業務を含みます。)に従事することが見込まれていることとの要件について、この「分割承継法人の業務」には、その分割承継法人との間に完全支配関係がある法人の業務及びその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含むこととされました(法法 2 十二の十一ロ⑵、法令 4 の 3 ⑧四)。現物出資についても同様です(法法 2 十二の十四ロ⑵、法令 4 の 3 ⑮四)。
ハ 株式交換等及び株式移転
株式交換完全子法人の株式交換の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者がその株式交換完全子法人の業務(その株式交換後に行われる適格合併又はその株式交換完全子法人を分割法人若しくは現物出資法人とする適格分割若しくは適格現物出資(以下「適格合併等」といいます。)によりその株式交換完全子法人のその株式交換前に行う主要な事業がその適格合併等に係る合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人(以下「合併法人等」といいます。)に移転することが見込まれている場合には、その合併法人等の業務を含みます。)に引き続き従事することが見込まれていることとの要件について、この「株式交換完全子法人の業務」には、その株式交換完全子法人との間に完全支配関係がある法人の業務及びその適格合併等に係る合併法人等との間に完全支配関係がある法人の業務を含むこととされました(法法 2 十二の十七ロ⑴、法令 4 の 3 ⑳三)。支配関係がある法人間で行う株式交換等で株式交換以外のものについても同様です(法法 2 十二の十七ロ⑴)。また、株式移転についても同様です(法法 2 十二の十八ロ⑴、法令 4 の 3 ○24三)。
② 事業継続要件
支配関係がある法人間の組織再編成及び共同で事業を行うための組織再編成に係る事業継続要件について、次のとおり見直されました。
イ 合併、分割及び現物出資
合併に係る被合併法人のその合併前に行う主要な事業(共同で事業を行うための合併に該当するかどうかを判定する場合には、合併法人の合併前に行う事業と関連する事業に限ります。)がその合併後にその合併に係る合併法人(その合併後に行われる適格合併によりその主要な事業がその適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を含みます。)において引き続き行われることが見込まれていることとの要件について、この「合併法人」には、その合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人及びその適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人を含むこととされました(法法 2 十二の八ロ⑵、法令 4 の 3 ④四)。分割及び現物出資についても同様です(法法 2 十二の十一ロ⑶・十二の十四ロ⑶、法令 4 の 3 ⑧五⑮五)。
「含む」こととされているので、被合併法人の合併前に行う主要な事業の全てが 1つの法人において行われる必要はなく、完全支配関係がある複数の法人において行われる場合でもこの要件に該当することになります。
また、「合併法人との間に完全支配関係がある法人」は、合併後に新設されることが見込まれる法人や被合併法人の完全子会社で合併により合併法人の完全子会社となるものであっても該当します。
ロ 株式交換等及び株式移転
株式交換完全子法人の株式交換前に行う主要な事業(共同で事業を行うための株式交換に該当するかどうかを判定する場合には、株式交換完全親法人の株式交換前に行う事業と関連する事業に限ります。)が株式交換完全子法人(その株式交換後に行われる適格合併等によりその主要な事業がその適格合併等に係る合併法人等に移転することが見込まれている場合には、その合併法人等を含みます。)において引き続き行われることが見込まれていることとの要件について、この「株式交換完全子法人」には、その株式交換完全子法人との間に完全支配関係がある法人及びその適格合併等に係る合併法人等との間に完全支配関係がある法人を含むこととされました(法法 2十二の十七ロ⑵、法令 4 の 3 ⑳四)。支配関係がある法人間で行う株式交換等で株式交換以外のものについても同様です(法法2 十二の十七ロ⑵)。また、株式移転についても同様です(法法 2 十二の十八ロ⑵、法令 4 の 3 ○24四)。
(3)無対価組織再編成の明確化等の整備
対価が交付されない合併、分割及び株式交換について、以下に述べるとおり、適格組織再編成となる類型の追加及び非適格となった場合の課税関係の明確化等の整備が行われました。
①合併
イ 適格判定
無対価合併について、完全支配関係又は支配関係がある法人間で行われる合併に係る株式の保有関係に関する要件及び共同で事業を行うための合併に係る株式継続保有要件が、次のとおり整備されました。
イ 完全支配関係がある法人間で行われる合併
合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その合併が無対価合併である場合には、次の関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4の 3 ②二)。
A 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
B 被合併法人及び合併法人の株主等(その被合併法人及び合併法人を除きます。)の全てについて、その者が保有するその被合併法人の株式の数のその被合併法人の発行済株式等(その合併法人が保有するその被合併法人の株式を除きます。)の総数のうちに占める割合とその者が保有するその合併法人の株式の数のその合併法人の発行済株式等(その被合併法人が保有するその合併法人の株式を除きます。)の総数のうちに占める割合とが等しい場合におけるその被合併法人と合併法人との間の関係
(注 1 )株式には出資を、株式の数には出資の金額を、それぞれ含みます。以下同じです。
(注 2 )発行済株式等の総数とは、発行済株式又は出資の総数又は総額をいい、自己が有する自己の株式又は出資を除きます。以下同じです。
被合併法人と合併法人の株主構成が等しい場合には、合併の対価として合併法人の株式を交付してもしなくても、各株主の被合併法人株式の持分割合と合併前の合併法人株式の持分割合が合併後の合併法人株式の持分割合と等しいため、対価の交付がなかった場合についても対価の交付の省略があったと認められることから、適格合併になる類型とされたものです。なお、改正前の「一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」、「合併法人及びその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」及び「被合併法人及びその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」は、上記Bに包含されています。
また、合併前に被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件は、その合併が無対価合併である場合には、従前どおり、合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある場合に限り、この要件に該当することとされています。
ロ 支配関係がある法人間で行われる合併
合併前に被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その合併が無対価合併である場合には、上記イBの関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ③一)。
また、合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件についても、その合併が無対価合併である場合には、上記イBの関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ③二)。
ハ 共同で事業を行うための合併
被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併について、その合併が無対価合併である場合には、無対価合併に係る被合併法人の全て又は合併法人が資本又は出資を有しない法人である合併に加えて、上記イBの関係がある合併が適格合併に該当し得ることとされました(法令 4 の 3 ④)。この場合において、その合併の直前に被合併法人と他の者との間に当該他の者による支配関係があるときは、株式継続保有要件は、支配株主がその合併の直後に保有するその合併法人の株式の数に支配株主がその合併の直後に保有するその合併法人の株式の帳簿価額のうちに支配株主がその合併の直前に保有していた被合併法人の株式の帳簿価額の占める割合を乗じて計算した数の合併法人の株式を支配株主が継続して保有することが見込まれていることとされました(法令 4 の 3 ④五)。
(注 1 )合併の直後に保有する合併法人の株式の帳簿価額は、その無対価合併に該当する合併が適格合併に該当するものとした場合におけるその合併の直後のその合併法人の株式の帳簿価額とされています(法規 3 の 2 ①)。
(注 2 )すなわち、合併法人株式のうち合併により取得したものと考えられる数について、仮定計算により、これに代わる数として、その合併が適格合併に該当するものとした場合の合併法人株式の帳簿価額の増加分に相当する合併法人株式の数を用いることとするものです。
ロ 被合併法人の処理
非適格の無対価合併により合併法人にその有する資産又は負債の移転をした被合併法人は、その被合併法人の株主等が合併法人の株式の交付を受けたものとみなされる場合(下記ニロ参照)には、その合併法人からその交付を受けたものとみなされる合併法人の株式をその時の価額により取得し、直ちにその被合併法人の株主等に交付したものとすることとされました(法法62①後段)。
ハ 合併法人の処理
イ 資産調整勘定及び差額負債調整勘定の金額
非適格の無対価合併により被合併法人から資産又は負債の移転を受けた内国法人が株式その他の資産の交付をしなかった場合の資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額の算定方法が、次のとおりとされました(法法62の 8 、法令123の10⑮、法規27の16②③)。
A 非適格の無対価合併が上記イイBの関係がある無対価合併である場合において、一定の資産評定が行われているとき(Bの場合を除きます。)
Aに掲げる金額がBに掲げる金額を超える場合のその超える部分の金額を資産調整勘定の金額とし、Bに掲げる金額がAに掲げる金額を超える場合のその超える部分の金額を差額負債調整勘定の金額とすることとされました(法令123の10⑮一)。
A その移転を受けた事業に係る営業権(独立取引営業権を除きます。)のその一定の資産評定による価額
B その移転を受けた事業に係る将来の債務でその履行に係る負担の引受けをしたものの額
(注 1 )一定の資産評定とは、非適格合併により移転する資産及び負債の価額の評定(公正な価額によるものに限ります。)で、その非適格合併の後にその資産及び負債の譲渡を受ける者、その資産及び負債を有する法人の株式の譲渡を受ける者その他の利害関係を有する第三者又は公正な第三者が関与して行われるものとされています(法規27の16②)。対価の省略が可能な組織再編成が行われるのは基本的に100%グループ内であることから、非適格になるのは事業の移転先法人の株式のグループ外の者への譲渡が予定されている場合や事業再生の場合が想定されます。グループ外の者への譲渡の場合において、取引価格の決定に際して参考とされた営業権の価額は一応公正な営業権の価額とみることができると考えられることから、このような場合のデューデリジェンスにおける価額をもって営業権の価額として税務上も受け入れるというものです。したがって、この「関与」とは、非適格合併後にその非適格合併により移転した資産及び負債又はその資産及び負債を有する法人の株式の譲渡を受ける者がその譲渡をする者との間でその譲渡の対価の額に関する合意をするに際して参考とする程度の関与で足りるものと考えられます。また「公正な第三者」とは、例えば、第三者として事業再生に関与する者などが該当します。
(注 2 )独立取引営業権とは、独立して取引される慣習のある営業権をいいます。
(注 3 )上記Bの将来の債務からは、退職給与債務引受け又はその事業の利益に重大な影響を与える将来の債務(退職給与債務引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除きます。)でその履行が非適格合併等の日からおおむね 3 年以内に見込まれるもののその履行に係る負担の引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除くこととされています(法令123の10⑮一ロ)。すなわち、退職給与負債調整勘定又は短期重要負債調整勘定の基因となる債務が除かれています。
(注 4 )上記Bの「その履行に係る負担の引受けをした債務の額」は、上記(注 1 )の一定の資産評定による価額がその資産評定を基礎として作成された貸借対照表に計上されている負債に係るもの並びにその額、その算定の根拠を明らかにする事項及びその算定の基礎とした事項を記載した書類を保存している場合のその書類に記載されているものの額とされています(法規27の16③)。
B 非適格の無対価合併により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の取得価額(上記A(注 1 )の一定の資産評定を行っている場合には、上記AAの営業権の価額を含みます。)の合計額がその無対価合併により移転を受けた負債の額(退職給与債務引受額及び短期重要債務見込額に係る負債調整勘定の金額及び上記ABの金額を含みます。)の合計額に満たない場合
資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額は、ないものとされました(法令123の10⑮二)。
(注 1 )取得価額は、法人税法第61条の13第 7 項(適格合併に該当しない完全支配関係がある法人間の合併による譲渡損益調整資産の合併法人における取得価額)の規定の適用がある場合には、その適用がないものとした場合の取得価額とされています。
(注 2 )非適格の無対価合併により被合併法人から資産又は負債の移転を受けた内国法人が株式その他の資産の交付をしなかった場合に上記A及びBのいずれにも該当しないときは、法人税法第62条の 8 第 1項又は第 3 項の規定により資産調整勘定の金額又は差額負債調整勘定の金額を計算することになります。
ロ 増加する資本金等の額
非適格の無対価合併で上記イイBの関係がある無対価合併における合併法人の増加する資本金等の額の計算における純資産価額は、その無対価合併により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額からその無対価合併により移転を受けた負債の価額を控除した金額とされました(法令8 ①五ロ)。この場合に、その移転を受けた資産の価額には資産調整勘定の金額を含むこととされ、その移転を受けた負債の価額には負債調整勘定の金額を含むこととされました。
また、非適格の無対価合併で上記イイBの関係がある無対価合併が行われた場合において、合併法人が抱合株式を有するときは、純資産価額から減算する金額は、その抱合株式のその無対価合併の直前の帳簿価額にその抱合株式に対して交付されたものとみなされるその合併法人の株式の価額のうち配当等の額とみなされる金額(下記ニロ参照)を加算した金額とされました(法令 8 ①五)。
通常の非適格合併は、まず対価の額を純資産価額として増加する資本金等の額の計算をし、次に移転資産・負債の額と対価の額との差額をもって資産調整勘定又は差額負債調整勘定の金額とされていますが、対価の交付が省略された非適格合併が行われた場合には、省略された対価の額を算定することができないため、上記のようにまず資産調整勘定又は負債調整勘定の金額の算定をした上で、次にその資産調整勘定又は負債調整勘定の金額を含めた移転資産・負債の差額を純資産価額として増加する資本金等の額の計算をすることとされています。
(注) 「控除」とされていることから、移転を受けた資産の価額が移転を受けた負債の価額に満たない場合には、純資産価額はゼロとなり、その満たない部分の金額は寄附金の額その他その満たない部分の金額の性質に応じた処理となります。
ニ 被合併法人の株主の処理
イ 被合併法人株式の譲渡損益
内国法人が、旧株(その内国法人が有していた株式をいいます。)を発行した法人の非適格の無対価合併で上記イイBの関係がある無対価合併により旧株を有しないこととなった場合には、その旧株の譲渡損益を計算する場合における譲渡対価の額は、その旧株のその無対価合併の直前の帳簿価額に相当する金額とされ、適格合併に該当する無対価合併と同様に譲渡損益に対する課税が繰り延べられることが明確化されました(法法61の 2 ②、法令119の 7 の 2 ②)。
ロ みなし配当
非適格の無対価合併で上記イイBの関係がある無対価合併が行われた場合には、被合併法人の株主は、その被合併法人が合併法人に移転をした資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額(資産調整勘定の金額を含みます。)からその被合併法人が合併法人に移転をした負債の価額(負債調整勘定の金額を含みます。)を控除した金額をその被合併法人のその無対価合併の日の前日の属する事業年度又は連結事業年度終了の時の発行済株式等の総数で除し、これにその株主がその無対価合併の直前に有していたその被合併法人の株式の数を乗じて計算した金額に相当する合併法人の株式の交付を受けたものとみなすこととされ、その交付を受けたものとみなされる株式の価額が被合併法人の資本金等の額のうちその被合併法人の株式に対応する部分の金額を超える金額を、配当等の額とみなすこととされました(法法24③、法令23⑥一⑦)。
(注 1 )「被合併法人の株式に対応する部分の金額」は、対価の交付がある合併(法令23①一)と同様です。
(注 2 )「移転をした資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額(資産調整勘定の金額を含みます。)からその被合併法人が合併法人に移転をした負債の価額(負債調整勘定の金額を含みます。)を控除した金額」が、被合併法人の合併による資産及び負債の譲渡対価の額となると考えられます。
(注 3 )法人税法第24条第 1 項の「金銭の額及び金銭以外の資産の価額」の解釈については、「同項(引用注:法人税法第24条第 1 項)は、『金銭その他の資産の交付を受けた場合』と規定しているのであって、この文言に反して、実際の交付がないにもかかわらず、同様の経済的成果が生じたときもこれに該当すると解すべき合理的な根拠は特に認められない」(東京高裁平成26年 6 月12日判決)との判決がありますが、上記の改正はこの解釈に変更を加えるものではありません。
なお、無対価合併に係るみなし配当の額について完全子法人株式等に係る配当等の額、関連法人株式等に係る配当等の額又は非支配目的株式等に係る配当等の額に該当するかどうかを判定する場合におけるその支払に係る効力が生ずる日及びその支払に係る基準日は、いずれもその無対価合併の日とされました(法令22の 2 ①②)。連結納税制度の場合についても、同様とされています(法令155の9 ①②)。
また、無対価合併に係るみなし配当の額についても、他のみなし配当と同様に、基因となった事由、その事由が生じた日及び同日の前日における発行済株式等の総数並びに 1 株当たりみなし配当の額等を株主に対して通知しなければならないこととされました(法令23④)。
ハ 合併法人株式の帳簿価額
内国法人の有する株式(ハにおいて「旧株」といいます。)を発行した法人を合併法人とする合併が行われた場合において、その合併が非適格の無対価合併で上記イイBの関係があるものであるときは、所有株式(その旧株を発行した法人の株式で、その合併の直後にその内国法人が有するものをいいます。)のその合併の直後の移動平均法により算出した 1単位当たりの帳簿価額は、その旧株のその合併の直前の帳簿価額にその合併に係る被合併法人の株式でその内国法人がその合併の直前に有していたもののその直前の帳簿価額(その合併により交付を受けたものとみなされる合併法人の株式の価額のうち配当等の額とみなされる金額(上記ロ参照)があるときは、そのみなされる金額を加算した金額)を加算した金額をその所有株式の数で除して計算した金額とされました(法令119の 3 ⑩)。
なお、有価証券の 1 単位当たりの帳簿価額を総平均法により算出している場合には、その無対価合併の日の属する事業年度開始の時からその合併の直前の時までの期間及びその合併があった時からその事業年度終了の時までの期間をそれぞれ 1 事業年度とみなして、上記の例により総平均法によりその 1 単位当たりの帳簿価額を算出することになります(法令119の 4 ①)。
②分割
イ 適格判定
無対価分割について、完全支配関係又は支配関係がある法人間で行われる分割に係る株式の保有関係に関する要件及び共同で事業を行うための分割に係る株式継続保有要件が、次のとおり整備されました。
イ 完全支配関係がある法人間で行われる分割
分割前に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件ついて、その分割が無対価分割に該当する分割型分割である場合には、次の関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑥二イ)。
A 分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係
B 分割法人の株主等(その分割法人及び分割承継法人を除きます。)及び分割承継法人の株主等(その分割承継法人を除きます。)の全てについて、その者が保有するその分割法人の株式の数のその分割法人の発行済株式等(その分割承継法人が保有するその分割法人の株式を除きます。)の総数のうちに占める割合とその者が保有するその分割承継法人の株式の数のその分割承継法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しい場合におけるその分割法人と分割承継法人との間の関係
なお、改正前の「一の者が分割法人及び分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係」及び「分割承継法人及びその分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係」は、上記Bに包含されています。
また、分割前に分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件は、その分割が無対価分割である場合には、従前どおり、分割型分割にあっては分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある場合に限りこの要件に該当することとされ、分社型分割にあっては分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある場合に限りこの要件に該当することとされています。
ロ 支配関係がある法人間で行われる分割 分割前に分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その分割が無対価分割である場合には、上記イBの関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑦一イ)。
また、分割前に分割法人と分割承継法人との間に同一の者による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その分割が無対価分割に該当する分割型分割である場合には、上記イA又はBの関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4の 3 ⑦二)。
なお、無対価分割に該当する分社型分割の場合には、従前どおり、分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある場合に限り、この要件に該当することとされています。
ハ 共同で事業を行うための分割 分割法人と分割承継法人とが共同で事業を行うための分割について、その分割が無対価分割である場合には、分割法人の全てが資本又は出資を有しない法人である分割型分割に加えて、上記イBの関係がある分割型分割及び分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある分社型分割が適格分割に該当し得ることとされました(法令 4 の 3⑧)。この場合には、株式継続保有要件は、次の分割の区分に応じ次のとおりとされました。
A 分割型分割
その分割型分割の直前に分割法人と他の者との間に当該他の者による支配関係がある場合には、株式継続保有要件は、支配株主がその分割型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の数に支配株主がその分割型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の帳簿価額のうちに支配株主がその分割型分割の直前に保有していたその分割法人の株式の帳簿価額のうちその分割型分割によりその分割承継法人に移転した資産又は負債に対応する部分の金額の占める割合を乗じて計算した数のその分割承継法人の株式を支配株主が継続して保有することが見込まれていることとされました(法令 4 の 3 ⑧六イ)。
(注 1 )「分割型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の帳簿価額」は、その無対価分割に該当する分割型分割が適格分割型分割に該当するものとした場合におけるその分割型分割の直後のその分割承継法人の株式の帳簿価額とされています(法規 3 の 2 ②)。
(注 2 )「分割承継法人に移転した資産又は負債に対応する部分の金額」は、その無対価分割に該当する分割型分割に係る分割純資産対応帳簿価額(分割法人の株式の帳簿価額に分割移転割合を乗じて計算した金額をいいます。以下同じです。)とされています(法規 3 の2 ③)。
B 分社型分割
株式継続保有要件は、その分社型分割に係る分割法人がその分社型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の数にその分割法人がその分社型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の帳簿価額のうちにその分割法人がその分社型分割によりその分割承継法人に移転した資産又は負債の帳簿価額を基礎として計算した金額の占める割合を乗じて計算した数のその分割承継法人の株式を分割法人が継続して保有することが見込まれていることとされました(法令 4 の 3 ⑧六ロ)。
(注 1 )「分社型分割の直後に保有するその分割承継法人の株式の帳簿価額」は、その無対価分割に該当する分社型分割が適格分社型分割に該当するものとした場合におけるその分社型分割の直後のその分割承継法人の株式の帳簿価額とされています(法規 3 の 2 ④)。
(注 2 )「分割承継法人に移転した資産又は負債の帳簿価額を基礎として計算した金額」は、その無対価分割に該当する分社型分割の直前の移転資産(その分社型分割により
分割承継法人に移転した資産をいいます。)の帳簿価額から移転負債(その分社型分割により分割承継法人に移転した負債をいいます。)の帳簿価額を控除した金額とされています(法規 3 の 2 ⑤)。
ロ 分割型分割に係る分割法人の処理
非適格の無対価分割型分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をした分割法人は、その無対価分割型分割が上記イイBの関係がある無対価分割型分割である場合には、その分割法人の株主等が交付を受けたものとみなされる分割承継法人の株式(下記ホイ参照)をその分割承継法人からその時の価額により取得し、直ちにその分割法人の株主等に交付したものとすることとされました(法法62①後段、法令122の15)。
なお、分割法人の減少する資本金等の額及び利益積立金額は対価の交付がある分割型分割と同様であり、特に改正はありません(法令 8 ①十五、 9 ①九)。
ハ 分社型分割に係る分割法人の処理
内国法人がその内国法人を分割法人とし、その内国法人の有する株式(ハにおいて「旧株」といいます。)を発行した法人を分割承継法人とする分社型分割を行った場合において、その分社型分割が非適格の無対価分割で分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係があるものであるときは、所有株式(その旧株を発行した法人の株式で、その分社型分割の直後にその内国法人が有するものをいいます。)のその分社型分割の直後の移動平均法により算出した 1 単位当たりの帳簿価額は、その旧株のその分社型分割の直前の帳簿価額に移転時価純資産価額を加算した金額をその所有株式の数で除して計算した金額とされました(法令119の 3 ⑬)。
上記の「移転時価純資産価額」とは、移転資産(営業権にあっては、独立取引営業に限ります。)の価額(資産調整勘定の金額を含みます。)から移転負債の価額(負債調整勘定の金額を含みます。)を控除した金額をいいます。
(注 1 )「移転資産」とは、その分社型分割により分割承継法人に移転した資産をいい、「移転負債」とは、その分社型分割により分割承継法人に移転した負債をいいます。
(注 2 )「控除」とされていることから、移転資産の価額が移転負債の価額に満たない場合には、増加する分割承継法人株式の帳簿価額はゼロとなり、その満たない部分の金額は原則として受贈益の額となります。
なお、有価証券の 1 単位当たりの帳簿価額を総平均法により算出している場合には、その無対価分社型分割の日の属する事業年度開始の時からその分社型分割の直前の時までの期間及びその分社型分割があった時からその事業年度終了の時までの期間をそれぞれ 1 事業年度とみなして、上記の例により総平均法によりその 1 単位当たりの帳簿価額を算出することになります(法令119の 4 ①)。
ニ 分割承継法人の処理
イ 資産調整勘定及び差額負債調整勘定の金額
非適格の無対価分割(分割法人が分割の直前において行う事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が分割承継法人に移転するものに限ります。)により分割法人から資産又は負債の移転を受けた内国法人が株式その他の資産の交付をしなかった場合の資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額の算定方法が、合併と同様に、次のとおりとされました(法法62の 8 、法令123の10⑮、法規27の16②③)。
A 非適格の無対価分割が上記イイBの関係がある無対価分割型分割又は分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある無対価分社型分割である場合において、一定の資産評定が行われているとき(Bの場合を除きます。)
Aに掲げる金額がBに掲げる金額を超える場合のその超える部分の金額を資産調整勘定の金額とし、Bに掲げる金額がAに掲げる金額を超える場合のその超える部分の金額を差額負債調整勘定の金額とすることとされました(法令123の10⑮一)。
A その移転を受けた事業に係る営業権(独立取引営業権を除きます。)
のその一定の資産評定による価額
B その移転を受けた事業に係る将来の債務でその履行に係る負担の引受けをしたものの額
(注 1 )一定の資産評定とは、上記①ハイと同様です。
(注 2 )上記Bの将来の債務からは、退職給与債務引受け又はその事業の利益に重大な影響を与える将来の債務(退職給与債務引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除きます。)でその履行が非適格合併等の日からおおむね 3 年以内に見込まれるもののその履行に係る負担の引受け係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除くこととされています(法令123の10⑮一ロ)。上記①ハイと同様です。
(注 3 )上記Bの「その履行に係る負担の引受けをした債務の額」は、上記(注 1 )の一定の資産評定による価額がその資産評定を基礎として作成された貸借対照表に計上されている負債に係るもの並びにその額、その算定の根拠を明らかにする事項及びその算定の基礎とした事項を記載した書類を保存している場合のその書類に記載されているものの額とされています(法規27の16③)。上記①ハイと同様です。
B 非適格の無対価分割により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の取得価額(上記A(注 1 )の一定の資産評定を行っている場合には、上記AAの営業権の価額を含みます。)の合計額がその無対価分割により移転を受けた負債の額(退職給与債務引受額及び短期重要債務見込額に係る負債調整勘定の金額及び上記ABの金額を含みます。)の合計額に満たない場合
資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額は、ないものとされました(法令123の10⑮二)。
(注)非適格の無対価分割により分割法人から資産又は負債の移転を受けた内国法人が株式その他の資産の交付をしなかった場合に上記A及びBのいずれにも該当しないときは、通常どおり法人税法第62条の 8 第 1 項又は第 3 項の規定により資産調整勘定
の金額又は差額負債調整勘定の金額を計算することになります。
ロ 増加する資本金等の額
非適格の無対価分割型分割で上記イイBの関係がある無対価分割型分割における分割承継法人の増加する資本金等の額の計算における純資産価額は、その無対価分割型分割により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額からその無対価分割型分割により移転を受けた負債の価額を控除した金額とされました(法令 8 ①六ハ)。この場合に、その移転を受けた資産の価額には資産調整勘定の金額を含むこととされ、その移転を受けた負債の価額には負債調整勘定の金額を含むこととされました。
また、非適格の無対価分割型分割で上記イイBの関係がある無対価分割型分割が行われた場合において、分割承継法人が有する分割法人の株式がある場合に純資産価額から減算する金額は、その分割法人の株式に係る分割純資産対応帳簿価額(その分割法人の株式に対して交付されたものとみなされるその分割承継法人の株式の価額のうち配当等の額とみなされる金額(下記ホイ参照)がある場合には、その金額を加算した金額)とされました(法令 8 ①六)。
非適格の無対価分社型分割で分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある無対価分社型分割における分割承継法人の増加する資本金等の額の計算における純資産価額は、その無対価分社型分割により移転を受けた資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額からその無対価分社型分割により移転を受けた負債の価額を控除した金額とされました(法令 8 ①七ハ)。この場合に、その移転を受けた資産の価額には資産調整勘定の金額を含むこととされ、その移転を受けた負債の価額には負債調整勘定の金額を含むこととされました。
(注)「控除」とされていることから、移転を受けた資産の価額が移転を受けた負債の価額に満たない場合には純資産価額はゼロとなり、その満たない部分の金額は寄附金の額その他その満たない部分の金額の性質に応じた処理となります。
ホ 分割型分割に係る分割法人の株主の処理
イ みなし配当
非適格の無対価分割型分割で上記イイBの関係がある無対価分割型分割が行われた場合には、分割法人の株主は、その分割法人が分割承継法人に移転をした資産(営業権にあっては、独立取引営業権に限ります。)の価額(資産調整勘定の金額を含みます。)からその分割法人が分割承継法人に移転をした負債の価額(負債調整勘定の金額を含みます。)を控除した金額をその分割法人のその無対価分割型分割の直前の発行済株式等の総数で除し、これにその株主がその無対価分割型分割の直前に有していたその分割法人の株式の数を乗じて計算した金額に相当する分割承継法人の株式の交付を受けたものとみなすこととされ、その交付を受けたものとみなされる株式の価額が分割法人の資本金等の額のうちその分割法人の株式に対応する部分の金額を超える金額を、配当等の額とみなすこととされました(法法24③、法令23⑥二⑦)。
(注)「分割法人の株式に対応する部分の金額」は、対価の交付がある分割型分割(法令23①二)と同様です。ただし、分割型分割に係る株式の総数に代えて、分割型分割の直前の発行済株式等の総数で分割資本金額等を除すこととされています(法令23①二)。
なお、無対価分割型分割に係るみなし配当の額について完全子法人株式等に係る配当等の額、関連法人株式等に係る配当等の額又は非支配目的株式等に係る配当等の額に該当するかどうかを判定する場合におけるその支払に係る効力が生ずる日及びその支払に係る基準日は、いずれもその無対価分割型分割の日とされました(法令22の 2 ①②)。連結納税制度の場合についても、同様とされています(法令155の 9 ①②)
また、無対価分割型分割に係るみなし配当の額についても、他のみなし配当と同様に、基因となった事由、その事由が生じた日及び分割型分割の日における発行済株式等の総数並びに 1 株当たりみなし配当の額等を株主に対して通知しなければならないこととされました(法令23④)。
ロ 分割法人株式の帳簿価額
内国法人の有する株式(ロにおいて「旧株」といいます。)を発行した法人を分割法人とする分割型分割が行われた場合において、その分割型分割が非適格の無対価分割に該当する分割型分割で上記イイBの関係があるものであるときは、所有株式(その旧株を発行した法人の株式で、その分割型分割の直後にその内国法人が有するものをいいます。)のその分割型分割の直後の移動平均法により算出した 1 単位当たりの帳簿価額は、その旧株のその分割型分割の直前の帳簿価額からその旧株に係る分割純資産対応帳簿価額を控除した金額をその所有株式の数で除して計算した金額とされました(法令119の 3 ⑪)。すなわち、非適格分割型分割の場合も適格分割型分割の場合と同様となります。
なお、有価証券の 1 単位当たりの帳簿価額を総平均法により算出している場合には、その無対価分割型分割の日の属する事業年度開始の時からその分割型分割の直前の時までの期間及びその分割型分割があった時からその事業年度終了の時までの期間をそれぞれ 1 事業年度とみなして、上記の例により総平均法によりその 1 単位当たりの帳簿価額を算出することになります(法令119の 4 ①)。
ハ 分割承継法人株式の帳簿価額
内国法人の有する株式(ハにおいて「旧株」といいます。)を発行した法人を分割承継法人とする分割型分割が行われた場合において、その分割型分割が非適格の無対価分割に該当する分割型分割で上記イイBの関係があるものであるときは、所有株式(その旧株を発行した法人の株式で、その分割型分割の直後にその内国法人が有するものをいいます。)のその分割型分割の直後の移動平均法により算出した 1 単位当たりの帳簿価額は、その旧株のその分割型分割の直前の帳簿価額にその分割型分割に係る分割法人の株式でその内国法人がその分割型分割の直前に有していたものに係る分割純資産対応帳簿価額を加算した金額(その分割型分割により交付を受けたものとみなされる分割承継法人の株式の価額のうち配当等の額とみなされる金額(上記イ参照)があるときは、そのみなされる金額を加算した金額)をその所有株式の数で除して計算した金額とされました(法令119の 3 ⑫)。
なお、有価証券の 1 単位当たりの帳簿価額を総平均法により算出している場合には、その無対価分割型分割の日の属する事業年度開始の時からその分割型分割の直前の時までの期間及びその分割型分割があった時からその事業年度終了の時までの期間をそれぞれ 1 事業年度とみなして、上記の例により総平均法によりその 1 単位当たりの帳簿価額を算出することになります(法令119の 4 ①)。
③株式交換
イ 適格判定
無対価株式交換について、完全支配関係又は支配関係がある法人間で行われる株式交換に係る株式の保有関係に関する要件及び共同で事業を行うための株式交換に係る株式継続保有要件が、次のとおり整備されました。
イ 完全支配関係がある法人間で行われる株式交換
株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その株式交換が無対価株式交換である場合には、株式交換完全子法人の株主(その株式交換完全子法人及び株式交換完全親法人を除きます。)及び株式交換完全親法人の株主等(その株式交換完全親法人を除きます。)の全てについて、その者が保有するその株式交換完全子法人の株式の数のその株式交換完全子法人の発行済株式等(その株式交換完全親法人が保有するその株式交換完全子法人の株式を除きます。)の総数のうちに占める割合とその者が保有するその株式交換完全親法人の株式の数のその株式交換完全親法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しい場合におけるその株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間の関係(以下「株主均等割合保有関係」といいます。)がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の3 ⑱二)。
なお、改正前の「一の者が株式交換完全子法人及び株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する関係(同一者完全支配関係)」及び「株式交換完全親法人及びその株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する者が株式交換完全子法人の発行済株式等の全部を保有する関係(親法人完全支配関係)」は、株主均等割合保有関係に包含されています。
ロ 支配関係がある法人間で行われる株式交換
株式交換等前に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件について、その株式交換等が無対価株式交換である場合には、株主均等割合保有関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑲一)。
また、株式交換等前に株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間に同一の者による支配関係がある場合の株式の保有関係に関する要件についても、その株式交換等が無対価株式交換である場合には、株主均等割合保有関係がある場合に限り、この要件に該当することとされました(法令 4 の 3 ⑲二)。
ハ 共同で事業を行うための株式交換
株式交換完全子法人と株式交換完全親法人とが共同で事業を行うための株式交換について、その株式交換が無対価株式交換である場合には、株主均等割合保有関係がある株式交換が適格株式交換等に該当し得ることとされました(法令 4 の3 ⑳)。この場合において、その株式交換の直前に株式交換完全子法人と他の者との間に当該他の者による支配関係があるときは、株式継続保有要件は、支配株主がその株式交換の直後に保有するその株式交換完全親法人の株式の数に支配株主がその株式交換の直後に保有するその株式交換完全親法人の株式の帳簿価額のうちに支配株主がその株式交換の直前に保有していたその株式交換完全子法人の株式の帳簿価額の占める割合を乗じて計算した数のその株式交換完全親法人の株式を継続して保有することが見込まれていることとされました(法令 4 の 3 ⑳五)。
ロ 株式交換完全親法人の処理
イ 株式交換完全子法人株式の取得価額 非適格の無対価株式交換が行われた場合の株式交換完全親法人の処理について、その株式交換に係る株式交換完全親法人がその株式交換により取得をする株式交換完全子法人の株式の取得価額は、その無対価株式交換が株主均等割合保有関係がある無対価株式交換であり、かつ、その無対価株式交換の直前にその株式交換完全親法人と株式交換完全子法人との間に完全支配関係があった場合には、その株式交換完全子法人の株主が有していたその株式交換完全子法人の株式のその株式交換の直前の帳簿価額(株式交換完全子法人の株主が50以上である場合には、株式交換完全子法人の簿価純資産価額に株式の取得割合を乗ずる等の方法により計算した金額)であることとされ(法令119①十)、その他の場合には、その株式交換により取得をする株式交換完全子法人の株式のその取得の時における取得のために通常要する価額(法令119①二十七)とされました。
ロ 増加する資本金等の額
非適格の無対価株式交換に係る株式交換完全親法人の増加する資本金等の額は、その無対価株式交換が株主均等割合保有関係がある無対価株式交換である場合には、移転を受けた株式交換完全子法人の株式の取得価額に相当する金額とされました(法令 8 ①十)。なお、非適格の無対価株式交換で株主均等割合保有関係がない無対価株式交換が行われた場合には、資本金等の額は増加せず、原則としてその株式交換により移転を受けた株式交換完全子法人の株式の価額による受贈益を計上することになります。
ハ 株式交換完全子法人の株主の処理
イ 株式交換完全子法人株式の譲渡損益
内国法人が、旧株(その内国法人が有していた株式をいいます。)を発行した法人の行った非適格の無対価株式交換で株主均等割合保有関係がある無対価株式交換によりその旧株を有しないこととなった場合には、その旧株の譲渡損益を計算する場合における譲渡対価の額は、その旧株のその無対価株式交換の直前の帳簿価額に相当する金額とされ、適格株式交換等に該当する無対価株式交換と同様に譲渡損益に対する課税が繰り延べられることが明確化されました(法法61の 2⑨、法令119の 7 の 2 ⑤)。
ロ 株式交換完全親法人株式の帳簿価額
内国法人の有する株式(ロにおいて「旧株」といいます。)を発行した法人を株式交換完全親法人とする株式交換が行われた場合において、その株式交換が非適格の無対価株式交換で株主均等割合保有関係があるものであるときは、所有株式(その旧株を発行した法人の株式で、その株式交換の直後にその内国法人が有するものをいいます。)のその株式交換の直後の移動平均法により算出した 1 単位当たりの帳簿価額は、その旧株のその株式交換の直前の帳簿価額にその株式交換に係る株式交換完全子法人の株式でその内国法人がその株式交換の直前に有しいたもののその直前の帳簿価額を加算した金額をその所有株式の数で除して計算した金額とされました(法令119の 3⑮)。
なお、有価証券の 1 単位当たりの帳簿価額を総平均法により算出している場合には、その無対価の株式交換の日の属する事業年度開始の時からその株式交換の直前の時までの期間及びその株式交換があった時からその事業年度終了の時までの期間をそれぞれ 1 事業年度とみなして、上記の例により総平均法によりその 1 単位当たりの帳簿価額を算出することになります(法令119の 4 ①)。
(4)その他
①組織再編成の対価として自己の株式の交付を受けた場合の減少する資本金等の額の明確化
法人が自己の株式の取得等をした場合の減少する資本金等の額について、その取得価額相当額を減少する資本金等の額とする「自己の株式の取得」から除かれる「自己株式の取得等」(法人税法第24条第 1 項第 5 号から第7 号までに掲げる事由をいいます。以下同じです。)から、次の取得が除かれることが明確化されました(法令 8 ①二十一)。
イ 合併による合併法人からの取得
ロ 分割型分割に係る分割法人の株主等としての取得
ハ 適格分割に該当しない無対価分割による取得で法人税法施行令第23条第 3 項第 5 号に掲げる事由による取得に該当しないもの
(注 1 )法人税法施行令第23条第 3 項第 5 号に掲げる事由とは、合併又は分割若しくは現物出資(適格分割若しくは適格現物出資又は事業を移転し、かつ、その事業に係る資産にその分割若しくは現物出資に係る分割承継法人若しくは被現物出資法人の株式が含まれている場合のその分割若しくは現物出資に限ります。)による被合併法人又は分割法人若しくは現物出資法人からの移転をいいます。このため、上記ハに該当するものは、事業を移転しない無対価分割で、その分割により分割承継法人に移転する資産に分割承継法人の株式が含まれている分割による取得となります。
(注 2 )無対価分割でない非適格分割(事業を移転するものを除きます。)による自己株式の取得の場合には、その取得資本金額が減少する資本金等の額となり(法令 8①二十)、事業を移転する非適格分割による自己株式の取得の場合には、従前より「自己株式の取得等」から除外される事由に該当していることから、引き続きその自己株式の取得のために通常要する価額に相当する金額が減少する資本金等の額となります(法令 8 ①二十一)。
ニ 現物分配による現物分配法人からの取得
②合併等による種類資本金額に加算する資本金等の額の調整の明確化
法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人、株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人とする合併、分割、適格現物出資、非適格現物出資、株式交換又は株式移転が行われた場合(その法人がその合併等の直後に2 以上の種類の株式を発行している場合に限ります。)に、増加した資本金等の額を交付した各種類の株式に係る時価の比で按分してその種類の株式に係る種類資本金額に加算することとするのは、その法人の株式が交付される合併、分割、適格現物出資、非適格現物出資、株式交換又は株式移転とすることが明確化されました(法令 8 ③)。
(注)非適格現物出資は、現物出資法人の非適格現物出資の直前において行う事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部がその非適格現物出資により被現物出資法人に移転するものに限ります。
また、 2 以上の種類の株式を発行する法人を合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人とする合併、分割又は株式交換が行われた場合に、増加した資本金等の額を各種類の株式の発行済株式の時価の比で按分してその種類の株式に係る種類資本金額に加算することとするのは、その法人の株式が交付されない合併、分割又は株式交換とすることが明確化されました(法令 8 ④)。
(注)これにより、無対価の合併、分割及び株式交換のほか、金銭や親法人の株式などが交付される組織再編成においては、増加した資本金等の額を各種類の株式の発行済株式の時価の比で按分してその種類の株式に係る種類資本金額に加算することになります。
③株式交換以外の株式交換等の範囲の明確化
全部取得条項付種類株式の端数処理又は株式併合の端数処理のうち株式交換等に該当するものは、これらの行為により最大株主等である法人との間にこれらの法人による完全支配関係を有することとなることであること(すなわち、最大株主等が個人である場合又は最大株主等である法人による完全支配関係がない場合には株式交換等に該当しないこと)が明確化されました(法法 2 十二の十六)。
④株式交換等における対価要件の明確化
株式交換等のうち、全部取得条項付種類株式の端数処理及び株式併合の端数処理について、これらの行為により生ずる株式交換完全子法人等の 1 に満たない端数の株式の取得の対価として交付される金銭その他の資産を除いて適格要件のうち対価要件を判定することが明確化されました(法法 2 十二の十七)。