移転価格税制の現実
移転価格税制という言葉を聞いて、皆さんはどのようなイメージを持たれますか?
中小企業の社長に聞くと、決まって次のような答えが返ってきます。
「ウチみたいな中小企業には関係ないでしょ。上場しているようなもっと大きな会社に適用される制度でしょ。」
今度は上場企業の社長に聞くと、次のような答えが返ってきます。
「そういう制度があるのは分かっているけど、ウチに限って適用されることはないよ。」
ほとんどの社長は移転価格税制について他人事のように考えています。
しかし、残念ながら現実は違います。
以下の表は、国税庁が発表している移転価格税制の更正件数とその増差金額をまとめたものです。
事務年度 (7月~6月) |
更正件数 | 増差金額 | 1件あたり増差金額 |
---|---|---|---|
平成26年 | 240件 | 178億円 | 0.74億円 |
平成25年 | 170件 | 537億円 | 3.16億円 |
平成24年 | 222件 | 974億円 | 4.39億円 |
平成23年 | 182件 | 837億円 | 4.60億円 |
平成22年 | 146件 | 698億円 | 4.78億円 |
平成21年 | 100件 | 687億円 | 6.87億円 |
平成20年 | 134件 | 286億円 | 2.13億円 |
平成19年 | 133件 | 1,698億円 | 12.77億円 |
平成18年 | 101件 | 1,055億円 | 10.45億円 |
平成17年 | 119件 | 2,849億円 | 23.94億円 |
平成16年 | 82件 | 2,168億円 | 26.44億円 |
(国税庁のウェブサイトより作成)
見て頂けば分かるように更生件数は年々増加しており、1件あたりの増差金額は年々減少しています。移転価格税制のすそ野は確実に広がっているのです。
現実を分かっていただけましたか?
移転価格税制は思いのほか身近にあるものなのです。
移転価格税制の適用による影響
移転価格税制とは、国外のグループ会社との取引価格に関する制度です。
グループ会社間の取引であればその取引価格は比較的自由に決定できるため、軽課税国にあるグループ会社に所得を移転させる目的で取引価格を設定することを制限しているのがこの制度です。
では移転価格税制が適用されるとどのような影響があるのでしょうか?
移転価格税制が適用されると過去6年間の取引価格が税務当局の考える取引金額に更正され、その差額に対して追徴税額が課されます。
前出の通り更正金額は減少しているとはいえ、更正による追徴税額は会社にとって非常に大きな負担です。
またそれ以上に、更正がされた場合は新聞等で取り上げられることも多く、会社に対して悪い印象を持たれてしまいます。
さらに、当初の課税所得に基づいて自社株の贈与や譲渡を行っていた場合には、日本の親会社の課税所得の修正により、贈与税又は譲渡所得税等へ影響が派生することも想定されます。
では、移転価格税制の更正を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?
移転価格税制への対策
仮にグループ内の組織再編を行った場合には、それに伴って国内外の内部取引価格の設定が必要になりますが、その取引価格の設定は経営上の重要課題であり、事業の根幹に影響を及ぼす事象です。
そのため、組織再編スキームの検討段階から、国外グループ会社との取引に関する課税リスクを分析し対応方針を検討する必要があります。
その後、リスクの度合いに応じて、移転価格設定方針書や移転価格文書の作成が必要になることがあります。
その文書は会社に保管しておき、将来税務当局からの問い合わせがあった場合にはその書類を提出して、取引価格の妥当性を立証することになります。
移転価格税制への対応には、組織再編のスキーム設計段階から検討する必要があり、再編のプロジェクトチームとの連携が不可欠となります。
組織再編支援と共同での対応支援
当社には公認会計士、税理士などの専門家が多数おり、常に連携を取りながら作業を行えるため、移転価格税制への対応を意識した価格設定を組織再編支援と合わせてご提供することができます。
また、課税リスク分析や移転価格文書の作成は、一般的な税務知識だけでは対応できない部分もありますが、われわれの中には移転価格に特化した経験豊富な税理士がおり、課税リスク分析から移転価格文書化、強いてはその後のアフターフォローに至るまでワンストップでサービスをご提供することが可能です。
この内容を知りたい方は、一度、是非、お問い合わせください。まずは、資料のご請求からでも結構です。