税制改正2 適格組織再編成等が行われた場合の欠損金の切捨て

(1)改正前の制度の概要

内国法人とその内国法人との間に支配関係がある他の法人(支配関係法人)との間でその内国法人を合併法人等とする適格組織再編成等が行われた場合において、その内国法人と支配関係法人との間に最後に支配関係があることとなった日が内国法人の適格組織再編成等の日の属する事業年度開始の日の5年前の日後であるときは、その適格組織再編成等が共同で事業を営むためのものに該当する場合を除き、その内国法人の次の①及び②の欠損金額は、ないものとすることとされています(法法57④)。
なお、 適格組織再編成等とは、適格合併若しくは適格合併に該当しない合併で法人税法第61条の13第1項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益の繰延べ)の規定の適用があるもの、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配をいいます。


①内国法人のその内国法人と支配関係法人との間に最後に支配関係があることとなった日(支配関係発生日)の属する事業年度(支配関係事業年度)前の各事業年度において生じた欠損金額
②内国法人の支配関係事業年度以後の各事業年度において生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額
この特定資産譲渡等損失額に相当する金額は、内国法人の支配関係事業年度以後の各事業年度(対象事業年度)ごとに、次のイの金額からロの金額を控除した金額とされています(法令112⑧)。
イ 対象事業年度に生じた欠損金額のうち、 対象事業年度を法人税法第62条の7第 1項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)の規定が適用される事業年度としてその内国法人が支配関係発生日において有する資産について、同項の規定を適用した場合に特定資産譲渡等損失額となる金額に達するまでの金額
ロ 対象事業年度において生じた欠損金額のうち、その内国法人において所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び法人税法第80条(欠損金の繰戻しによる還付) の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となったもの並びに法人税法第57条 第4項、第5項又は第9項の規定によりないものとされたもの
なお、内国法人が連結親法人又は連結子法人(連結法人)である場合には、その連結法人の前9年内連結事業年度において生じた連結欠損金個別帰属額を前9年内事業年度において生じた欠損金額とみなすことなどにより法人税法第57条第4項の規定により欠損金額からないこととされる金額(上記①及び②の金額)に相当する金額(制限対象欠損金額相当額)は、連結欠損金額からないものとすることとされています。(法法81の 9 ⑤三、法令155の20⑤)。


(2)改正の内容

内国法人の欠損金額からないものとされる欠損金額(制限対象欠損金額)の計算について、次の見直しが行われました。

①内国法人が適格組織再編成等により資産の移転を受けていた場合の特定資産譲渡等損失額に相当する金額の計算
上記⑴②の欠損金額からないものとされる特定資産譲渡等損失額に相当する金額を計算する場合において、上記⑴の適格組織再編成等の日以前 2 年以内の期間で内国法人と支配関係法人との間に最後に支配関係があることとなった日(支配関係発生日)以後の期間(合併等前2年以内期間)内において、その内国法人又は内国法人及び支配関係法人の両方との間に支配関係がある法人(特定支配関係法人)を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とし、特定支配関係法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする1又は2以上の特定適格組織再編成等が行われていたときは、その特定適格組織再編成等により移転があった資産のうちその内国法人が有することとなったものについては、その内国法人が支配関係発生日において有するものとみなすこととされました(法令112⑥⑪)。

この内国法人が有することとなった資産をその内国法人が支配関係発生日において有するものとみなすことにより、内国法人がその移転を受けた資産の譲渡等をしたことにより生じた損失の額は、上記⑴②イの特定資産譲渡等損失額となる金額を構成することとなり、内国法人の欠損金額からないものとされる欠損金額となります。
(注)連結欠損金額からないものとされる制限対象欠損金額相当額を計算する場合には、法人税法第57条第4項の規定によって計算することとされています(法令155の20⑤)ので、この改正により、連結法人が特定適格組織再編成等により資産の移転を受けていたときは、その移転を受けた資産をその連結法人が支配関係発生日において有する ものとみなして、連結欠損金額からないものとされる制限対象欠損金額相当額を計算することとなります。
内国法人が支配関係発生日において有するものとみなされる資産については、上記1⑵ ①の被合併法人等が支配関係発生日において有するものとみなされる資産と同様とされています(法令112⑪)ので、上記1 ⑵①を参照してください。

②内国法人の欠損金額のうちに特定支配関係法人から引継ぎを受けた欠損金額がある場合 におけるないものとされる欠損金額の計算
上記⑴②の欠損金額からないものとされる特定資産譲渡等損失額に相当する金額を計算する場合において、特定支配関係法人を被合併法人とする適格合併を行ったこと又は特定支配関係法人の残余財産が確定したことによりその内国法人に引き継がれた欠損金額がある場合において、その引き継がれた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額があるときは、その金額は、内国法人の欠損金額からないものとすることとされました。
(注)連結欠損金額からないものとされる制限対象欠損金額相当額を計算する場合には、法人税法第57条第4項の規定によって計算することとされています(法令155の20⑤) ので、この改正により、連結法人の連結欠損金個別帰属額とみなされた特定支配関係法人の欠損金額のうちに特定資産譲渡等損失相当欠損金額がある場合には、その特定資産譲渡等損失相当欠損金額は、連結欠損金額からないものとされます。
具体的には、内国法人の適格組織再編成等の日以前2年以内の期間内に内国法人又は特定支配関係法人を合併法人とし、特定支配関係法人を被合併法人とする1若しくは2 以上の適格合併(合併等前2年以内適格合併)が行われていた場合又は1若しくは2以上の特定支配関係法人の残余財産が確定していた場合において、その内国法人の欠損金額とみなされた合併等前2年以内適格合併に係る被合併法人である特定支配関係法人又は残余財産が確定した特定支配関係法人(関連法人)の各事業年度において生じた欠損金額のうち、特定資産譲渡等損失相当欠損金額がある場合には、その特定資産譲渡等損失相当欠損金額は、上記⑴②イの特定資産譲渡等損失額となる金額に加算することとされました(法令112⑦⑪)。
なお、特定資産譲渡等損失相当欠損金額の計算については、上記 1 ⑵②と同様とされています(法令112⑦⑪)ので、上記1 ⑵②を参照してください。

③特定資産譲渡等損失相当欠損金額の特例計算
上記の特定資産譲渡等損失相当欠損金額を計算する場合に、関連法人の支配関係発生日の属する事業年度の前事業年度終了の時における純資産価額を基礎とした金額により計算することができる特例が設けられています(法令113⑪)。
(注)連結欠損金額からないものとされる制限対象欠損金額相当額を計算する場合についても、上記と同様に連結法人の純資産価額を基礎として計算した金額とすることができる特例が設けられています(法令155の20 ⑧⑨)。具体的な計算方法については、上記 1 ⑵③ と同様とされていますので、詳細については、上記1 ⑵③を参照してください。

(3)適用関係

上記⑵の改正は、内国法人と平成25年4月1日以後にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった支配関係法人との間で行われる適格組織再編成等について適用し、内国法人と同日前にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった支配関係法人との間で行われた適格組織再編成等については、従前どおりとされています(改正法令附則5 ②)。


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