企業が合併する際のシステム対応について
企業の合併において、「基幹システムをどのように統合していくか」は重要な課題となります。
2社の合併の場合、
1.新規にシステムを構築する
2.両方のシステムを残す
3.片方のシステムを残し、もう片方を廃止する
といった方針案が考えられますが、多くの場合、3の「片方のシステムを残し、もう片方を廃止する」が採用されます。
その理由は、システム構築におけるリスクの観点から説明することができます。
①新規にシステムを構築する場合のリスク
元来、基幹システムの構築においては、「十分な要件の洗い出し」と「強力なプロジェクト推進力」が必要となります。それらが不十分な状態で基幹システムの構築に着手すると、様々な個所で不備が発生し、非現実的なシステムや業務プロセスが出来上がってしまう可能性が非常に高く、最悪、業務遂行ができなくなる可能性もあります。
合併前後は、企業文化や業務の統合にリソースを集中しているもので、そんな中での基幹システムの新規構築はリスクが高いといえます。
②両方のシステムを残すリスク
まず考えられるのがデータの不整合や内部統制上のリスクです。また、2つのシステムに対する利用料の二重支払いや管理者の配置が必要となり、ITシステム運用の効率が悪くなります。
一番は、システムに紐づいていることの多い業務プロセスについて各社のプロセスがそのまま残ることになるため、そもそも合併した意味合いは何だったのかということにもなりかねません。
特に、合併前の両社に共通のお客さまや仕入れ先がある場合には混乱を招き、対外的な信用力の低下につながる可能性があり業績への大きなリスク要因ともなり得ます。
総合的な観点で、一方の基幹システムを残しもう一方を廃止する方法の方が、合併後の業務プロセスの統合、システムの安定稼働やデータの整合性の担保、業務効率性の面でメリットが大きいことがお分かりいただけると思います。よほどの理由がない限りは、片方に寄せる方式を採用することをお勧めします。
このように、組織再編時において「組織としての基幹システムをどのように構築するか」は、ビジネスに大きな影響を与え得る、非常に重要な論点です。
事前に十分な検討が必要であり、「しまった!やってしまった!」となる前に、事前にご相談ください。
(執筆:本庄)