会社分割により労働者派遣事業を移転する場合の注意点
会社分割により事業を移転する場合には、税務会計上の論点意外にも、様々な論点があります。
その中で、最も注意しなければならないのは「事業の継続性」に関する論点です。
本日は、その中でも会社分割により「一般労働者派遣事業を移転」する場合の注意点についてお話し致します。
1.一般労働者派遣事業は会社分割により承継できない
まず、許認可の中には会社分割により承継会社に「承継」できるものと、承継できず「新規取得」をするものに分けられます。
「承継」できるものについては、手続が不要である場合や、簡単な届出(事前又は事後)だけで済むため、手続上の大きな問題になることはあまりありません。
一方で、承継できず「新規取得」の手続が必要な場合には、組織再編のスケジュール全般に大きく影響を与えます。
そして、今回の主題である「一般労働者派遣事業」は、会社分割によって承継することができず、新規取得のための手続が必要な許認可、になります。
2.設立時の出資金に注意
会社分割により事業を移転する場合は、多くの場合、移転した直後から事業を開始する必要がありますが、一般労働者派遣事業の認可をうける場合の要件である「資産要件」に注意が必要です。
この資産要件の1つに
・申請会社の「資産」から「負債」を引いた金額(いわゆる純資産)が「2000万円×事業所数」以上
というものがあります。
移転直後に手続を開始することが多いのですが、設立時から上記の要件を満たそうとすると、設立当初の出資金により条件を満たすしかありません。
もし事業所数が「3か所」ある場合、はじめから純資産が6000万円(2000万円×3か所)必要ということになります。
許認可について何も考慮せず設立を進めると、税務上の観点から通常は「資本金1000万円以下」にすることが多いと思われますが、上記のような例の場合に資本金を1000万円以下にしてしまうと、いざ、許認可申請をしようとしたときにあらためて増資手続きなどが必要になってしまいます。
さらにいうと、増資した場合でも、期の途中(例えば、中間決算又は月次決算)で資産要件をクリアすることを証明するためには、公認会計士又は監査法人による監査証明を受ける必要がある、とされています。
会社分割により事業を移転する場合、このようなことも検討していかなければなりません。
組織再編には多くの手法がありますが、特に会社分割については十分な事前検討を行うよう注意する必要があります。
(執筆:松岡)