株式移転したら配当が払えない!?
「株式移転して持株会社を作りました」という会社に我々がよく確認するのが「初年度の配当財源って考えられていますか?」という質問です。
どういうことかと言うと、株式移転により設立されたときの貸借対照表は、一般的に以下のようになります。
S社株式 600 | 資本金 100
資本準備金 100 その他資本剰余金 400 |
ポイントとなるのは「その他資本剰余金」という見慣れない科目が出てくるということです。「その他資本剰余金」そのものは、配当財源として、「利益剰余金」と同様に認められています。株式移転した会社の配当財源は、「その他資本剰余金」になりやすいということが今回の話のポイントです。
その他資本剰余金からの配当とは
では、その他資本剰余金の配当の何が問題かというと、「株主」の税金が複雑になるということです。専門的には下記のような考え方となるのですが、要は「株主からすると面倒な配当」ということになることを知っておいて頂きたいと思います。利益剰余金による配当は「通常の配当」として取り扱いをされますが、その他資本剰余金は税務上「資本の払戻し」とみなされることが根本的に違う処理を生むことに注意が必要です。
(個人株主のケース)
【利益剰余金を原資とする配当】
税務上、配当所得として扱います。
【資本剰余金を原資とする配当】
税務上、株主が保有する株式の一部を譲渡したものとみなされます(「みなし譲渡」と呼ぶ)。みなし譲渡による利益は、譲渡所得として扱われます。株主は、自ら譲渡損益を計算し、原則として、確定申告を行う必要があります。
※資本剰余金を原資とする配当であっても、税法上、「資本の払戻し」に該当しない部分(「みなし配当」と呼ぶ)は配当所得として扱います。
もし、初年度の配当をしたいけれど、配当財源が「その他資本剰余金」を使うしかないという場合には、「初年度は配当はやめて、利益剰余金を溜めて2年目から配当をする」あるいは「初年度でも利益(剰余金)が溜まるようになるべく初年度の期間を長くする」ことをお勧めします。
とはいえ、上場企業の場合は、配当をしない訳にはいきませんので、下記のような説明文を付けて配当をすることになります。「株式移転の場合の初年度の配当は大変である」ことも意識して、持株会社化の検討をしていきましょう。
http://www.txhd.co.jp/ir/stock/return/pdf/2011exp.pdf
(執筆:西村)