「当社は、・・・・の目的から持株会社体制へ移行します。」
そんなフレーズを耳にされたことはありませんでしょうか?
私達、持株会社研究所員がみかける上場会社が持株会社化する「目的」は以下です。
【上場会社が持株会社化する目的(例)】
ただ、上場会社の開示例でみられる持株会社化の「目的」は、中小企業やオーナー企業が勝つためには必ずしもマッチしたものではありません。
なぜなら中小企業には、中小企業の資本構造上の「良さ」があるからです。
【中小企業の良さ】
では、中小企業が”持株会社化”するメリットをないのでしょうか?
いいえ、そんなことはございません。
一般的には以下のようなケースでメリットを享受できます。
【中小企業が持株会社化を行う目的(一般的なケース)】
①オーナー経営者が株式の集約をしやすくなる
社長が個人で数社の株を保有しているようなケースです。
事業承継にあたっては、それぞれの株を個別に承継していく必要があります。放っておくと相続のタイミングで親族に株が分散してしまいますよね。1社に集約した方が次世代への引継ぎがよりしやすくなるメリットがあります。
②M&Aがしやすくなる
事業譲渡のような形や合併ではなく、持株会社を作り既存会社と兄弟関係で株式を保有するほうが、新規に加わる会社を将来的には統合しやすくなるでしょう。対外的にもM&Aを積極的に行っていくというアピールになり、銀行や証券会社からの情報も得やすくなります。
③所有と経営の分離がしやすくなる
「今はオーナー社長ですが、将来的に従業員に社長を任せたい」、というケースです。
とはいっても
・将来的には従業員に株を買ってもらう(MBO)も視野にいれている。
・株価は高く(従業員に)今すぐに買ってもらうワケにも行かない。
そんなケースでは、先ずは、既存の事業会社の上に持株会社を設立し、オーナー社長は持株会社の代表取締役に就任します。
既存の事業会社の代表権を従業員へ委譲し、現オーナー社長は持株会社から見守る、という形です。
会長職のポジションを持株会社として行うようなイメージですね。
もし相続が発生して親族に株式が分散したとしても直ちに事業会社の経営支配権に直接的には影響は生じない。株を従業員に売却するにしても、外部にM&Aで売却するにしても、持株会社が事業会社の株式をまとめて保有するので、交渉がしやすい体制となっています。
以上、中小企業が持株会社化するメリットはいくつかありますが、あくまでも持株会社化は手段にすぎません。
目的を明確にし、その実現に向けて効果的かそうでないか、持株会社に精通している専門家ともよく検討する必要があります。
(執筆:武部)