先日
という話をしました。
しかし、分割会社で重畳的債務引受をしたとしても債権者保護手続が不要にならない場合があります。
それは、「人的分割(分割型分割)」のケースです。グループ会社でいうと、具体的には、兄弟会社間の会社分割がそれにあたります。
なぜ、人的分割だと債権者保護手続が省略できないのでしょうか。
その答えは、「剰余金の配当規制」にあります。
人的分割(分割型分割)=兄弟会社間の分割とはどのように実施するかというと、
① 新設分割or吸収分割により事業を移転して、分割承継法人株式を取得
② ①により取得した株式を分割法人の親会社に「現物配当」を実施
という2つの手続を行います。
会社法上の用語で説明すると、「物的分割(分社型分割)」+「現物配当」を同時に実施する手続になります。
ここで②の現物配当が出てくることがポイントです。
その「現物配当」は本来「剰余金の配当」に該当するため、本来は配当の分配制限(自己資本の枠内で配当する)が適用されますが、この人的分割(分割型分割)の処理については「配当制限の除外」とされています。
要は会社分割の決議を通じて株主がOKすれば、自己資本以上の会社を分社してもよいということになるということを意味します。
しかし、債権者の目線からしたら”たまったもの”ではありません。
分割会社としては、急に対象会社の純資産がなくなってしまったら、支払い能力を疑うことにもつながります。よって、人的分割(分割型分割)の場合は、重畳的債務引受を実施したとしても債権者保護手続がなければならないという話になります。
逆にいえば、配当制限に問題ない(自己資本に余裕がある)場合は、
人的分割(分割型分割)の決議ではなく、「物的分割(分社型分割)」と「現物配当(配当制限内)」の2つの決議を別々に実施すれば、
重畳的債務引受を実施した上で債権者保護手続は不要とすることもできることになります。
話はそれましたが、
原則的には、兄弟会社間の会社分割(人的分割)には債権者保護手続は必要と覚えておいてください。
(執筆:西村)
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