持株会社への経営指導料と消費税の課税売上割合
持株会社体制に移行する際に、必ず論点となるのが「経営指導料」です。
今回は、この「経営指導料」の税務上の論点(ニッチですが)についてお伝えします。
持株会社は「事業を行う場合(事業持株会社)」と「事業を行わない場合(純粋持株会社)」がありますが、主に後者の純粋持株会社の場合、持株会社の「収益構造」を検討する必要があります。
純粋持株会社の場合、持株会社自体は事業を行わないため、売上を上げることはありません。
事業を行っていなければ事業上の経費は発生しませんが、持株会社がグループの「シェアードサービス」や、「経営管理機能」を担っていることが多くあり、事業を行っていないとはいえ、人件費等の様々な費用が発生してきます。
そこで、このような費用を回収するため、持株会社の傘下にはいっている子会社から「経営指導料」や「業務委託費用」を徴収していく形を取ることが多くあります。
この経営指導料の「決め方」には様々な論点があり、安易に決定できるものではありませんが、その検討の際に忘れやすいのが、「消費税」の論点です。
損失が発生?事業子会社の課税売上割合をチェック!
基本的に、消費税は「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額を納税することなります。
グループ会社内で収益費用のやり取り(経営指導料の受取と支払)があった場合にも、持株会社が消費税を受取り、事業子会社が消費税を支払うこととなるため、グループとして納税する消費税に増減はありません。
しかし、これは課税売上割合が「100%」の場合となります。
課税売上割合とは、ざっくりと申しますと「すべての売上に対する、課税売上の割合」となります。
土地の売却などは「非課税売上」となり、このような非課税売上が多くなってくると、課税売上割合が下がっていくこととなります。
そして、事業子会社の課税売上割合が小さい場合、「支払った消費税」として扱われない消費税が出てくることとなります。
そうなると、上記のような「グループ内で影響はない」という状況にはならず、「経営指導料を支払わなければ発生することのなかった費用」が発生することになります。
子会社が持株会社に支払う費用が多額になればなるほど、上記の影響は大きくなります。
特に、「土地の仕入を含む不動産売買を行っている場合」など、子会社の課税売上割合が小さいとき(=非課税売上が大きいとき)は経営指導料の算定後に思わぬ費用が発生してしまうことがあります。
事前にしっかりとシミュレーションを行い、「こんなはずではなかった・・・」とならないようご注意ください。
(執筆:松岡)