円滑な人事制度の導入へ向けたポイント~グループ経営における人事制度~

 

グループ会社で人事制度を設計し、役員会で承認されると、いよいよ人事制度の導入となりますが、制度を機能させるためには、社員の前向きな理解と会社・社員一体となって運用することが重要です。

そこで、今回は、人事制度を円滑に導入するための必要事項とそのポイントについて解説します。

 

 

ポイント1.社員への説明

まずは、人事制度の内容について、社内説明会を実施することとなります。

 

社員は当然、自身の処遇を決める「人事制度」に関心を持っており、説明会の内容に不備や曖昧な説明があると不安感や不信感をもたせることになりますので、社内説明会においては、モデルケースや具体例などを提示し、社員目線にそってわかりやすく丁寧に説明することが重要です。

 

特に、手当を廃止したり、評価基準の厳格な運用など、社員にとって厳しいと思われる制度となる場合は、その理由や代替措置などを丁寧に説明する必要があります。

 

また、説明会においては社員から質問を受け付けることもありますが、すぐに多くの質問がでるケースは稀です。そこで説明会実施から1週間ほどを目途に質問を受け付ける期間を設け、質問に対する回答を全社に開示しているケースもあります。

 

最近では、拠点が離れていたり、一堂に会することができずに説明の温度差が発生することを回避するために、説明動画を活用することもおこなわれています。

動画の制作には時間や費用も要しますが、繰り返し何度も視聴することもできることからも有効な手法といえます。

 

さらに、欲をいえば、「人事制度を導入(変更)する理由や目的」について、丁寧に説明をし、理解と共感を得ることができればもっとよいでしょう。会社としてどういう方向に向かいたいのか、社員に何を期待しているのか、を冒頭にしっかりと説明することで、説明会の質も変わると思います。

ポイント2.労働条件の不利益変更への対応

グループ会社個々の事情・背景があって人事制度を構築・変更することになりますが、その結果、給与・賞与などの労働条件が悪化するケースもあり、このようなケースは労働契約法で定められた「労働条件の不利益変更」に該当します。

例えば、基本給が減額となった、住宅手当が廃止された、役職者の賞与の支給月数が下がった、などが労働条件の不利益変更に該当します。

 

労働条件の不利益変更は、原則として、会社の判断だけでおこなうことができず、該当する社員から個別に同意を得る必要があり、私たちが人事制度を支援する場合、社員個々の新しい労働条件を書面で通知し、その内容について同意を得ることをお勧めしています。

(同意に関する書面の内容はこちらをご参考ください※個人情報の入力が必要となります)

 

その他、労働条件の不利益変更に関してよくいただくご質問は下記のとおりです。

No 質問内容 回答
人事評価によっては、基本給が減額するような仕組みへ変更した場合、減額するかは人事評価結果次第であるので、労働条件の不利益変更に該当しないのではないか? 将来にわたって現行の労働条件が低下する可能性がある場合でも「労働条件の不利益変更」に該当します。
個別の同意をしない社員の対応は? 労働条件の変更の内容に“合理性”があれば社員の同意はなくても人事制度を変更することは可能です。

合理性とは、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情 を総合的に判断することになり、これらの合理性は裁判や労働審判等で判断されることとなります。

まずは、同意しない社員と話し合いを設定(場合によっては複数回)し、社員の不安・不満を解消するように努めることが必要ではないでしょうか。

長年の人事コンサルティングで蓄積したコンサルタントのノウハウを詰め込んだ人事評価・目標管理システムがあります。

 

ポイント3.評価者研修

人事制度を会社の文化として定着させるには、毎年度実施する人事評価を形骸化させずに運用し続けることが重要です。

そのためには、人事評価のキーマンとなる評価者が、その目的や内容・ポイントを正しく理解していることが重要であり、そのためにも評価者を対象とした「評価者研修」を実施することがあります。

 

評価者研修の内容は、下記のような項目で、4~5時間程度かけて実施するイメージです。一方的な説明会ではなく、ワークショップ方式を取り入れた体験型研修のようなものです。

項目 内容
(1) 自社の人事制度の説明 ・人事制度(等級・賃金・人事評価)の説明

・人事評価の目的・内容

・人事評価スケジュール

(2) 人事評価のポイント ・評価者としての基本姿勢

・適切な人事評価のためのポイント

・評価エラー

・よくあるQ&A

(3) グループディスカッション ・モデル社員を対象に人事評価を実施、その結果についてディスカッションをおこなう

・特定の社員の目標を設定し、目標設定におけるポイントについてディスカッション

・グループ発表

 

なお、外部のコンサルタントを活用して評価者研修を実施することもできますので、自社だけの対応が難しい場合は検討してみてはいかがでしょうか。

 

次回は、グループ経営を支える人事部門・人事システムについて解説します。

(執筆:藤崎)

 

長年の人事コンサルティングで蓄積したコンサルタントのノウハウを詰め込んだ人事評価・目標管理システムがあります。

更新日:2020.10.15 ,  タグ: ,

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