会社分割時に失念しやすい決議とは!?
会社分割を実施する際に決議すべき事項でもっとも大切なのは、当然「会社分割」の決議です。
しかし、それだけ決議しておけばスタートできるかといえばそうではありません。
新会社の定款の作成等登記に必要なものは決めておかないと、登記できないため忘れることはないのですが、新会社をスタートするに当たって決めなくてはいけないもののひとつとして「役員報酬総額」の決議があります。
会社法361条において、「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価は株主総会の決議によって定める」と規定されており、個別ではなく、役員報酬の”総額”をいくらにするかを株主総会で決議するのが一般的です。分割承継会社で、役員報酬が増額される場合は、新設会社の場合は、「役員報酬総額」の決議を、以前からある会社の場合は、「役員報酬総額」の変更の検討をする必要があります。
実務的になぜこの決議が重要かというと、「役員報酬総額」の決議を失念していると、税務上損金にならなくなるからです。
「役員報酬総額」以上の報酬の支払いをしていると、税務上超過額は否認されてしまいますので、くれぐれも「役員報酬総額」の決議を失念しないよう進めてください。
定期同額給与は大丈夫!?
会社分割は期中に実施されることもあります。そこで問題になるのが、分割会社及び分割承継会社で役員報酬が変更されることが税務上の「定期同額給与」に該当するかどうかの検討です。
国税庁の「役員給与に関する質疑応答事例」(平成18年12月)によると、
「分割前後において、実質的に、その役員の職務内容に変更がなく、また、 その役員の職務に対する役員給与の支給額が何ら変更されていない場合には、その役員 給与の額は定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられます。」
との記載もあり、期中で会社分割が実施されたとしても、分割会社の役員報酬が減少しても分割承継会社との報酬の合計額が同額であれば、「定期同額給与」に該当すると考えられます。
(執筆:西村)