労働承継法研究室人事労務管理①(規程、協定関係)

人事労務管理①(規程、協定関係)

(1) 労働契約に関する法的効果と実務上の論点

組織再編時における労働契約に関しての基本的な法的効果は以下のとおりである。

  • ・ 合併、会社分割・・・労働契約は包括承継される(同一の労働条件となる)
  • ・ 事業譲渡・・・個別の同意による(同一の労働条件とはならない場合がある)
  • ・ 株式譲渡・・・労働契約に変更は通常発生しない(同一の労働条件のままである)

実務上は、事業譲渡であっても転籍前の労働条件を考慮したり(同一又は同程度の労働条件を確保したり)、株式譲渡時でも譲渡先の会社の都合により労働条件の一部を変更したりするケースはおおいにありうる。いずれの再編フローであれ、以下3つの観点から、再編前後の労働条件を精査・比較検討する必要があろう。

  • ① 組織再編に関わるリスクヘッジ・・・譲渡会社等において労務コンプライアンス不遵守はないか。特に未払い賃金発生の有無は買収価格等にも影響。
  • ② 制度・条件の受容の可否・・・労働条件の差異の程度と差異の受け入れ可否。受け入れできない場合、不利益変更は発生するか。
  • ③ 労働者との合意形成 ・・・ 不利益変更が発生する場合、どのような対応策を講ずるか。また、どのように労働者の理解を得るか。

(2) 労働契約内容を確認する際のポイント

労働契約の内容を確認するためには、まずは就業規則をはじめとした各種規程、労働協約や労使協定、個別の労働契約書を書面で確認するとよい。以下、それぞれの書面で確認すべき主なポイントを述べる。

① 就業規則

就業規則のほか、賃金規程、退職金規程、育児介護休業規程等、諸規程の整備状況及び規定内容を確認する。

項目 ポイント
社員区分 どういった基準で社員を区別・管理しているか。社員区分が複数ある場合、規則の適用範囲は。
管理監督者の範囲 労働基準法上の管理監督者と位置づけ、時間外や休日割増手当の支給対象外としているのはどのような範囲か。
労働時間、休日 変形労働時間制や裁量労働制は導入しているか。導入している場合、導入要件は法的要件を満たしているか
賃金 各種手当、賞与、退職金の支給範囲や支給基準。計算期間や支給日。割増賃金の適法性。固定残業代制度の有無。退職金制度の概要。
休暇・休業・休職 年次有給休暇の付与時期、付与日数、付与単位、時効日等。特別休暇や休職制度の適用範囲、付与日数。
退職・解雇 定年年齢、再雇用に関する基準。解雇に関する基準。
安全衛生 安全衛生管理体制。健康診断の時期、内容、費用負担。
福利厚生 旅費や転勤補助、社宅、社内貸付金、慶弔見舞金等

なお、合併や会社分割によって労働協約や就業規則等の労働契約が包括承継される。

② 労使協定

合併や会社分割による組織再編時は、事業場の同一性が肯定される場合を除き、承継会社等に承継されることは無いと考えられる。この場合、あらたに労使協定の締結・届出が必要となる。代表的な労使協定は以下のとおりである。

項目 ポイント
時間外・休日労働(36協定) 有効期間。上限時間(1日、1ヵ月、1年)。特別条項の有無。
育児・介護休業 有期雇用契約者の適用基準。子の看護休暇や介護休暇における半日の単位。
定年再雇用 再雇用時の契約期間、雇用上限年齢。再雇用基準
賃金控除 法定外の控除項目の有無とその種類。
一斉休憩適用除外 休憩時間を一斉に付与しない労働者の範囲とその付与方法。
③ 個別の労働条件

就業規則や労使協定といった、いわば「全体」の労働条件を確認後、労働者個々の労働条件の内容を精査することになる。
特に賃金面に関しては、(本来、そのまま承継するはずだが)承継先等の会社にあわせて制度変更したとしても、月額や年収ベースで減額されないよう配慮するのが一般的である。この場合、等級等の人事制度全体とのバランスをどう図るかを検討する必要がある。

④ 規定や協定の内容と実態との乖離

就業規則や労使協定の内容と実態の運用では乖離が生じている可能性があるため、書面確認後は、「実際にはどのように運用しているか」実態を把握する必要がある(特に、創業者によるオーナー企業等は、規定にはない実務上のルールも多数存在する)。そのため、出勤簿や賃金台帳に記録された数値、実務担当者等へのインタビュー等で実態を把握する必要がある。

(社会保険労務士 吉田 慶太)

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