会社分割における労働契約承継法②
ここでは、主従事労働者の範囲、異議の申出、その他注意すべきポイントについて触れておく。
主従事労働者の範囲
主従事労働者とは、基本的には、分割契約等を締結等する日において、承継される事業に専ら従事している労働者をいう。また会社分割は、会社の事業に関して有する権利義務を単位としてなされるものであり、主従事労働者に該当するか否かは承継会社等に承継される事業を単位として判断するものである。
労働者が、承継される事業だけでなく他の事業にも従事している場合には、それぞれの事業に従事する時間、果たしている役割等を総合的に判断して、主従事労働者に該当するか否かを決定する。総務、人事、経理等のいわゆる間接部門に従事する労働者(以下、「従従事労働者」)であっても、承継される事業のために専ら従事している労働者は主従事労働者となるが、承継されない事業の業務も行っている場合には上記同様、総合的判断により決定することになる。
異議の申出
会社が、
- ① 主従事労働者を分割会社に残留させる場合(分割契約等に承継する旨の定めがない場合)
- ② 非主従事労働者(承継される事業に主として従事していない労働者)を承継会社等に承継させる場合(分割契約等に承継させる旨の定めがある場合)
には、これらの労働者は、異議の申出を行うことができる。その法的効果として、労働条件を維持したまま労働契約が承継または、分割会社に残留することとなる。
異議の申出は、労働者がこれまで主として従事してきた業務から切り離されるといった不利益から労働者を保護するという考えに基づいて規定されたものであり、分割会社が指定した異議申出先に、上記①・②の労働者が書面で通知する。
注意すべきポイント
Q1.会社が労働者を承継会社等または分割会社から排除する目的で意図的に配置転換を行った場合どうなるか。
A1.過去の勤務実態から判断して、その労働契約が承継会社等に承継されるべきまたは承継されないことが明らかな労働者について、分割会社が合理的理由なく労働者を承継会社等または分割会社から排除することを目的として、会社分割の効力発生日前に意図的に配置転換を行ったような場合には、その労働者が「主従事労働者」に当たるか否かは、当該労働者の過去の勤務の実態をみて判断することになる。
その上で、分割会社が、こうした配置転換を行ったような場合には、当該労働者は配置転換の向こうの主張を行うことができる。
Q2.異議の申出を行った労働者に対して、不利益な取扱いを行っても問題ないか。
A2.異議の申出は、これまで従事していた職務から切り離されないようにするために必要な、法に基づく労働者の権利であるため、会社は、労働者が異議の申出を行おうとしていること、または行ったことを理由として、解雇等の不利益取扱いを行ってはならない点に注意が必要である。
(社会保険労務士 鳥飼 祐介)