労働承継法研究室会社分割における労働契約承継法①

会社分割における労働契約承継法①

労働契約承継法(以下、「承継法」)は、商法等における会社分割制度の導入に伴い、分割をした会社の権利義務が分割によって承継する会社又は新規に設立する会社に包括的に承継されることを踏まえ、労働者保護の観点から、労働契約の承継等についての特例を定めるために制定された。承継法が適用されるのは、会社法に基づく会社分割を行う場合に限られ、事業譲渡や合併を行う場合には適用されない。
また、「労働者」とは、分割会社が雇用する労働者のことであり、パートタイマーや契約社員などの雇用形態にかかわらず、分割会社との間で労働契約を締結している全ての労働者を指す。会社分割を行うにあたり必要な手続は以下のとおりである。

7条措置(承継法第7条)

分割会社が、雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める事項を、労働者の過半数を代表する労働組合(過半数組合がない場合には過半数代表者)との協議その他これに準ずる方法により行うこととされている。会社分割は、承継される事業に従事している労働者のみならず、当該分割会社の全労働者に少なからず影響を与えることを考慮して、分割会社が雇用する全ての労働者に対して7条措置を行う必要がある。
なお、当該分割会社と労働組合等との協議等では、協議事項について必ず「同意」を得ることまでは求められないが、労使の相互理解の促進を図り、お互いの十分な理解と協力の下、労働者の保護と円滑な組織再編を図るためにも十分な協議等が必要となる。

5条協議(平成12年商法等改正法附則第5条)

5条協議は、会社分割制度が平成12年の商法等改正により創設された際に定められたもので、承継法を直接の根拠とするものではないが、会社分割にあたり必要な手続きであるため便宜上ここで触れる。5条協議の対象となる労働者は、

  • ① 承継される事業に従事している労働者(以下、「主従事労働者」)
  • ② 主従事労働者以外の労働者であって、分割契約等に労働契約の承継の定めのある労働者

であり、分割会社は、労働者保護のため、当該手続により承継される労働者の労働契約を承継会社に承継させるか、分割会社に残留させるかについて、労働者に必要な説明を十分に行い、労働者の希望を聴取した上で決定する必要がある。

2条通知(承継法第2条)

2条通知は、上記7条措置や5条協議を経た上で、実際に労働契約が承継会社等に承継される者に対する手続であり、

  • ① 主従事労働者
  • ② 主従事労働者以外の労働者であって、承継会社等に承継される労働者

が対象とされている。2条通知は書面による交付が義務付けられており、これは、個別の労働者に対して確実に到達する方法で通知するとともに、事後にトラブルが生じて労働者の地位が不安定になることを防止するためである。
主従事労働者については、分割契約等に労働契約が承継される旨の定めがあれば、その労働契約は承継会社等に承継されることとなるため、主従事労働者であるか否かの区別は、実務上、非常に重要な事項と言える。

(社会保険労務士 鳥飼 祐介)

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