会社分割の場合、どっちの会社でどの債権者に手続が必要?
分割会社や分割承継会社とそれぞれに債権者がおり、「どっちの会社」で「どの債権者」に対して債権者保護手続の実施を行う必要があるのでしょうか。
このテーマを考えるにあたっては、あなたがもし債権者であり、請求先の会社が会社分割する、という場合に困るかどうかという視点でシンプルに考えていきましょう。
分割スキームによる違い
物的分割か、人的分割かのスキームの違いにより、分割会社側で分割時に財産が変動するかがかわってきます。以下では2つ方法を比較してみていきましょう。
ケース1:物的分割(分社型分割)の場合
(前提)A社からB社へ会社分割を実施
① B社へ移転する債務の債権者…保護手続き必要(重畳的債務引受の場合不要)
② ①以外のA社の債権者…保護手続き不要
③ B社の債権者…保護手続き必要
上記のケースでは、
①の債権者は、B社に債権が移るので、請求先がかわります。なので、必要となります。ただし重畳的債務引受の場合は、もしB社から払ってもらえない場合はA社にも請求ができますので、不要となります。
②の債権者は、A社に引き続き請求できます。物的分割なので、A社は分割で移転する対価として株の交付を受けるので財産が毀損されることはないでしょう。
そのため、不要となります。
③の債権者は、B社では分割によって債務が増えるので心配ですよね。なので、必要となります。
ケース2:人的分割(分割型分割)の場合
(前提)A社からB社へ会社分割を実施
① B社へ移転する債務の債権者…保護手続き必要
② ①以外のA社の債権者…保護手続き必要
③ B社の債権者…保護手続き必要
上記のケースでは、
①の債権者は、B社に債権が移るので、請求先がかわります。なので、必要となります。ただし重畳的債務引受の場合は、もしB社から払ってもらえない場合はA社にも請求ができますが、人的分割なので、A社の財産は減少します(下記②参照)。そのため、必要となります。
②の債権者は、A社に引き続き請求できます。人的分割なので、A社は分割で移転する対価として株の交付を受けたと同時に配当して社外に財産が流出しますので、財産が減少しますので、必要となります。
③の債権者は、B社では分割によって債務が増えるので心配ですよね。なので、必要となります。
(執筆:武部)
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