グループ経営における人事制度

持株会社によるグループ経営においても人材マネジメントは重要なテーマであり、特に人事制度は、会社・社員双方に与える影響も大きいといえます。

一方で、持株会社への移行時は労働契約承継法への対応などもあり、持株会社への移行が落ち着いたタイミングで人事制度を整備することが多いようです。

 

持株会社化によって、これまでの人事制度を見直す場合、人材をどこの会社に在籍させるかによって、人事制度の内容も異なります。

具体的には①持株会社で直接雇用するケース、②グループ会社で直接雇用するケース。に分かれることが多く、それぞれの特徴について説明します。

 

(1)人材の在籍パターン

①持株会社で直接雇用するケース

 

②グループ会社で直接雇用するケース

 

③上記①、②の比較

項目 ①持株会社で直接雇用 ②グループ会社で直接雇用
目的・背景 グループ会社で統一感を持った運営を重視 グループ会社の独自性を重視する
人材の雇用 持株会社 グループ会社
会社間の人事異動の方法 持株会社による出向発令 転籍、または、出向
人材交流の頻度 多い 少ない
人材マネジメントの主体 持株会社 グループ会社
人事制度 グループ会社で統一 会社ごとに人事制度を設計
グループ会社における業種の数 少ない(例:グループ会社は全て飲食業) 多い(例:製造業・卸売業・小売業から構成)

 

グループ会社間の異動にあたっては、出向、または、転籍のいずれかを選択することが多く、それぞれの違いについては下表のとおりとなります。

なお、転籍は転籍前の会社を退職することから、通常は転籍した場合は転籍前の会社に戻ることは想定していません。

 

表●出向・転籍の違い(異動前をA社、異動後をB社とした場合)

項目 出向 転籍
雇用元 A社 B社
異動命令の根拠 A社の就業規則 本人の同意が必要
賃金の支払い A社(場合によってはB社もある) B社
社会保険・雇用保険 A社 B社(新たに資格取得が必要)
労働保険 B社 B社
退職金 A社 B社(一般的には転籍時にA社で退職金を支給)

 

(2)人材の在籍パターンごとの人事制度のポイント

①持株会社で直接雇用するケース

A)全社員が同一の人事制度を適用

持株会社の人事制度を全社員に適用することで、グループ会社間における異動(出向)があっても、持株会社の人事制度を適用でき、さらに、持株会社の理念・ビジョンを軸とした人事制度とすることで、グループとして求める人材を育成することができることが、メリットとなります。

一方で、グループ経営であってもグループ会社ごとに経営理念・ビジョン・戦略が異なることから、グループ企業の独自性も反映すべきであり、例えば、人事評価シートはグループ会社ごとに作成することが望ましいです。

 

B)グループ会社ごとの業種・規模・地域における賃金水準

グループ会社ごとに業種・規模・地域が異なる場合、賃金水準も大きく異なることがあります。

詳細については今後、説明しますが、賃金水準は人件費のみならず、採用、異動等の人事戦略に大きく影響するため、慎重に分析し、検討する必要があります。

したがって、基本給テーブルや手当・賞与支給月数は、業種・規模・地域ごとに細かく設計する必要もあり、社員に対しても説明できるよう準備することが重要です。

また、人事制度の見直しにより、これまでの賃金水準を引き下げざるを得ない場合は、労働条件の不利益変更になることから、移行措置なども慎重に検討する必要があります。

 

②グループ会社ごとに直接雇用するケース

A)グループ会社間の人事異動

グループ会社間での人事異動においては出向とするケースが多く、その場合、出向規程などで出向期間中の処遇について定めることが必要です。

人事制度においては、適用する人事評価シート・評価者についても検討する必要がありますが、人事評価に対する出向者の納得性を踏まえると出向先の上司も評価者として関与してもらう必要があります。

 

 

今回は、持株会社化における人事制度の基本について解説しましたが、今後はより具体的な人事制度について解説していきます。

(執筆:藤崎)

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  • 更新日:2020.6.8 ,  タグ: ,

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