グループ会社の人事評価制度の設計~グループ経営における人事制度~
ループ全体の方針と個別のグループ会社独自の視点もあり、どのような人事評価制度にすべきか、ご相談頂くことがあります。
人事評価制度とは、社員の“貢献度”を測る仕組みであり、以下の観点から人材マネジメントにおいて重要な仕組みであることはご承知のとおりだと思います
①会社のビジョンの実現や目標の達成
②会社として必要となる社員像を明示し、人材育成に活用
③人事評価の結果を処遇(給与・賞与・等級)へ反映
今回は「グループ経営における」人事評価制度についてご説明します。
(なお、グループ経営においては、グループ会社間の出向等、個別特殊事情があることは承知していますが、個別事情はいったん排していることをご了承ください。)
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人事評価制度のポイント
グループ経営における各社の人事評価制度の設計手順は下記3ステップです。
図1:人事評価制度設計の3ステップ
長年の人事コンサルティングで蓄積したコンサルタントのノウハウを詰め込んだ人事評価・目標管理システムがあります。
【STEP1】
① グループ全体としてのビジョン・求める人材像の確認
まずは、グループ全体として、どのような人材を求めるかが重要であり、グループとしてのビジョン・求める人材像を確認することになります。
具体的には、持株会社(人事部)へグループ方針・計画・採用方針などを確認することをお勧めします。
② グループ会社としてのビジョン・求める人材像の確認
一方で、グループ会社ごとに業種・規模や風土・価値観なども様々であり、グループ会社で人材マネジメントを行うことを踏まえると、グループ会社独自の視点が重要となります(表①参照)。
つまり、会社が社員に求める貢献の定義は会社ごとに異なりますので、会社独自の視点を取り入れなければ会社も社員にもしっくりこない人事評価となってしまいます。
そのためにも、まずは、グループ会社の経営幹部などに対し人事評価や求める人材像などについて意見を聴き、巻き込みながら進めていくことをお勧めします。
このようにグループ会社の独自性を重視しつつも、グループ全体としての統一感を持つというバランス感が必要となってきます。
【STEP2】
① 人事評価項目の検討
人事評価制度を導入する際には、グループ会社の会社規模(社員数)・期待役割・現行の運用状況を考慮して、各社が運用可能な制度設計を検討することになります。
例えば、営業職が多く在籍する販売系の会社であれば、目標管理制度による成果評価(売上・件数など)を重視した人事評価となります。
一方で、研究開発職が中心の新商品の開発会社であれば、競争優位性のある高品質な商品開発が求められており、短期的な成果ではなくプロセス評価を中心に目標管理制度を導入するバランス型の人事評価制度となります。
このように業種においても人事評価制度の内容は異なり、さらに会社規模や新卒採用の有無、労働組合の有無、スピード重視/品質重視、など、会社の戦略や外部環境などを反映した人事評価となるべきです。
このような視点がなく、グループ会社一律の人事制度となると、本来、評価すべき人材が正当に評価されない仕組みとなった結果、社員からの納得感の低下し、最終的には人事評価制度の形骸化へつながる懸念があります。
繰り返しになりますが、グループ全体の統一性に配慮しつつも、グループ会社独自の人事評価とすべきと考えます。
表①:グループ会社ごとの業種・規模別の人事評価制度例
② 人事評価者・スケジュールの検討
人事評価制度が円滑に運用できるよう評価者やスケジュールも検討する必要があります。人事評価者について、基本的には一緒に仕事をしたり相談に乗ったりと被評価者の仕事ぶりを一番近くで見ている直属の上司が評価者となりキーマンとなります。
また、スケジュールについては給与改定月・賞与支給月との日程調整が重要となりますが、あまりタイトなスケジュールの場合、人事評価の最終調整や被評価者へのフィードバックなどが疎かになるケースもありますので、余裕を持ったスケジュールとすべきでしょう。
【STEP3】
① 人事評価制度の社員説明
人事評価制度に内容を理解してもらうためにも社員に対して説明することが求められます。説明会のポイントとしては、人事評価制度の背景や目的をきちんと伝えることはもちろん、社員にとっては不利益変更となる部分がある場合でも、会社として適切に説明し、社員に理解してもらうことが必要です。
また、評価者を対象に評価者研修を実施するケースもありますので、定期的に実施することをお勧めします。
② 人事評価制度運用フォロー
人事評価制度の導入以降も予期せぬ問題や不満が現場では起こりえることから、継続的に人事評価に関する問題・不満の声を集め、必要に応じ制度・運用を変更することが必要です。
つまり、人事評価制度は導入がゴールではなく、継続的に運用し続けることが重要です。
最後に、リモートワークを導入している企業では、社員との物理的距離が遠くなる場面も増え、コミュニケーション不足を危惧する声も高まっています。
これからは今まで以上に、上司のサポート・フィードバックや成長機会の提供、公正な評価によって、社員のエンゲージメントを高めていくことが求められるでしょう。
次回は人事評価の納得度向上のアプローチについて解説します。
(執筆:小野)
長年の人事コンサルティングで蓄積したコンサルタントのノウハウを詰め込んだ人事評価・目標管理システムがあります。
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