分社型分割
100%グループ内の適格分社型分割(法法2十二の十一イ)
分割法人と分割承継法人との間に完全支配関係がある場合において、次の要件を満たしたときは、その分割(分割の日において分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない場合に限る。)は「適格分社型分割」に該当する。
① 金銭等不交付要件
分割法人に分割承継法人株式又は分割承継親法人株式(分割承継法人の100%親会社の株式)のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと。
② 株式継続保有要件
(「親子会社関係」のケース)
分割後に、分割法人と分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑥一)
(「兄弟会社関係」のケース)
分割後に、分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑥二)
50%超100%未満グループ内の適格分社型分割(法法2十二の十一ロ)
分割法人と分割承継法人との間に支配関係がある場合において、次の要件を満たしたときは、その分割(分割の日において分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない場合に限る。)は「適格分社型分割」に該当する。
① 金銭等不交付要件
分割法人の株主に分割承継法人株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと。
② 主要資産等引継要件
分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。
③ 従業者引継要件(法基通1-4-4、1-4-10)
分割直前の分割事業に係る従業者(出向受入者も含む)のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が、分割後に分割承継法人の業務に従事すること(分割法人の従業員の出向による従事も含む)が見込まれていること。
④ 事業継続要件
分割に係る分割事業が、分割後に分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること。
⑤ 株式継続保有要件
(「親子会社関係」のケース)
分割後に、分割法人と分割承継法人との間に当事者間の支配関係がが継続することが見込まれていること(法令4の3⑦一)
(「兄弟会社関係」のケース)
分割後に、分割法人と分割承継法人との間に同一の者による支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑦二)
三角分社型分割の範囲等に関する特例(措法68の2の3②)
内国法人の行う適格分社型分割が次の要件のいずれにも該当するときは、適格分社型分割に該当しない。
- ①分割法人の資産及び負債の大部分が分割承継法人に移転するものとして一定のものであること。
- ②分割法人と分割承継法人との間に特定支配関係があること。
- ③分割法人の株主等又は分割法人に分割承継親法人株式(特定軽課税外国法人に該当する外国法人の株式に限る。)が交付されること。
- ④分割承継法人に事業活動の実体が認められる等一定の要件を満たしていないこと。
無対価分社型分割
- (1) 無対価分社型分割の定義(法法2十二の十ロ)
- 無対価分社型分割とは、分割対価資産が交付されない分割で、分割の直前において分割法人が分割承継法人の株式を保有している場合(分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合を除く。)の分割をいう。
- (2) 100%グループ内の場合
- ①「親子会社関係」のケース (法令4の3⑥一)
分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有している場合で、分割後も分割法人が分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係が継続する見込みであるときは、無対価であっても適格分社型分割となる。●親子会社関係の無対価分社型分割
②「子孫会社関係」のケース (法令4の3⑥二ニ)
分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有している場合で、分割後も分割法人と分割承継法人との間に同一の者による完全支配関係が継続する見込みであるときは、無対価であっても適格分社型分割となる。●親子孫会社関係の無対価分社型分割1
また、上記の場合において、一の者によって分割法人の株式を売却等する予定があるときであっても、分割法人と分割承継法人の間に当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれているときは、無対価であっても適格分社型分割となる(法令4の3⑥一) ため、一の者による分割法人株式の継続保有関係は実質的に影響がないこととなる。
●子孫会社関係の無対価分社型分割2
③「兄弟会社関係」のケース (法令4の3⑥二ロ)
実務的なケースとして想定されるものは稀であると考えられる。
分社型分割の法人税課税の取扱い
- (1) 分割法人の課税の取扱い
- ① 適格分社型分割の場合
分割法人が適格分社型分割により分割承継法人に資産及び負債の移転をしたときは、分割承継法人にその資産及び負債の分割直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、分割法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62の3①)。
したがって、適格分社型分割における資産及び負債の移転による譲渡損益は発生しない。また、適格分社型分割により移転した資産及び負債の簿価純資産価額は、分割により取得する分割承継法人の株式の帳簿価額(株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用を加算した金額)となり(法令119①七)、無対価分社型分割により移転した資産及び負債の簿価純資産価額は,分割前から有する分割承継法人の株式の帳簿価額に加算する(法令119の3⑬) - ② 非適格分社型分割の場合
分割法人が非適格分社型分割により分割承継法人に資産及び負債の移転をしたときは、分割承継法人にその資産及び負債の分割時の価額(時価)による譲渡をしたものとして、分割法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62①)。
したがって、分割による資産及び負債の移転は、分割法人において譲渡損益が発生することになる。また、非適格分社型分割により移転した資産及び負債の時価純資産価額は、分割により取得する分割承継法人の株式の帳簿価額となる(法法62①)。
ただし、分割法人と分割承継法人との間に完全支配関係があるときは、いわゆるグループ法人税制の適用があるため、非適格分社型分割時の価額(時価)により移転する資産のうち譲渡損益調整資産に係る譲渡損益については課税が繰り延べられる (法法61の13②)。 - (2) 分割承継法人の課税の取扱い
- ① 適格分社型分割の場合
・「資産の部」「負債の部」の受入れ
分割承継法人が適格分社型分割により資産及び負債の移転を受けたときは、その資産及び負債の取得価額は、分割法人の分割直前の帳簿価額(その取得のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とする(法令123の4)。
・「純資産の部」の受入れ
分割承継法人が適格分社型分割により資産及び負債の移転を受けたときは、次の方法で算出した金額を分割承継法人の資本金等の額として加算する(法令8①七)。なお、分割承継法人は分割法人の利益積立金額を引継げないことに留意が必要である。加算項目 算式 資本金等の額 移転資産・負債の簿価純資産価額 ② 非適格分社型分割の場合
・「資産の部」「負債の部」の受入れ
分割承継法人が非適格分社型分割により資産及び負債の移転を受けたときは、その資産及び負債の受入れは、分割の時の価額(時価)を受入価額とする。
・「純資産の部」の受入れ
分割承継法人が非適格分社型分割により資産及び負債の移転を受けたときは、次の方法で算出した金額を分割承継法人の資本金等の額に加算する(法令8①七)。なお、分割承継法人は分割法人の利益積立金額を引継げないことに留意が必要である。加算項目 算式 資本金等の額 移転資産・負債の時価純資産価額―交付した金銭等 - (3) 分割法人の株主の課税
- 分社型分割の場合、適格・非適格に関わらず分割法人の株主にみなし配当課税及び譲渡損益課税は発生しない。