組織再編税制研究室非適格組織再編成における課税関係

非適格組織再編成における課税関係

非適格組織再編成における課税関係

非適格組織再編成を実施した場合、譲渡法人は、譲受法人に対して、資産及び負債をその組織再編成の時の価額(時価)により譲渡としたものとして取り扱う。
譲渡法人は、移転した資産及び負債の法人税法上の帳簿価額と時価との差額を「譲渡損益」として再編を実施した事業年度の所得計算に含めるものとし、譲受法人は、法人税法上の時価により資産及び負債を受け入れる。
ただし、非適格組織再編成が実施された場合において、その法人の間に完全支配関係があるときは、その再編成により実施された資産及び負債の譲渡利益又は譲渡損失は、原則として、課税が繰り延べられる。

非適格組織再編成における固定資産の処理

法人税法上、非適格組織再編成により固定資産を取得した場合には、個々の資産をその非適格組織再編成が行われた時に時価で取得したものとされるため、次の項目に留意する必要がある。

①少額減価償却資産、一括償却資産
譲渡資産の取得価額が10万円未満であれば、全額損金経理を要件として少額減価償却資産の取扱いを受けることができる(法令133)。
20万円未満のものであれば、一括償却資産として処理することができる(法令133の2)。
非適格組織再編成のケースでは再編成時の時価が20万円未満まで下落することにより減価償却費が増大し、損益に対する影響が大きくなる場合があることに留意が必要である。

②中古耐用年数の適用
非適格組織再編成により取得した固定資産(無形固定資産を除く)は、被合併法人側では、既に利用してきた「中古資産」であるため、中古資産の耐用年数を使用することができる(耐令3①)。
しかし、たいていの場合、中古耐用年数の見積が困難である場合が多く、ほとんどの場合、簡便法を適用する。
次の区分に応じ、それぞれの年数が適用される。
・法定耐用年数の全部を経過している場合
法定耐用年数×20%
・法定耐用年数の一部を経過している場合
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

※計算結果について1年未満の端数を切捨てる。ただし、2年未満のものは、2年で計算する。

欠損金の繰戻し還付

内国法人について非適格合併による解散又は事業の全部の譲渡あるいは事業の重要部分の譲渡等が生じた場合には、その事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度において生じた欠損金額について繰戻し還付を適用することが認められている(法法80④、法令154の3)。
非適格合併又は事業譲渡により多額の譲渡損失が発生した場合には、繰戻し還付の適用を検討する必要がある。

非適格合併等の課税上の留意点

(1) 非適格合併等の意義(法法62の8①、法令123の10①)
非適格合併等とは、次に掲げるものをいう。
①非適格合併
②非適格分割、非適格現物出資若しくは事業の譲受け(非適格分割等という)のうち、分割法人、現物出資法人又は移転法人の非適格分割等の直前において営む事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が非適格分割等により分割承継法人、被現物出資法人又は譲受け法人(事業の譲受けをした法人をいう)に移転をするもの
(2) のれん
会計上、「のれん」とは組織再編成等において相手方に交付した対価が、取得した純資産額の時価を上回る場合のその差額をいう。
対価が、取得した純資産額の時価を下回る場合のその「のれん」を「負ののれん」という。
税務上においては、非適格合併等が行われる場合に限り、会計上の「のれん」の一部につき、「資産調整勘定」として資産計上あるいは「負ののれん」の場合は「差額負債調整勘定」として負債計上し、その償却を認めている(法法62の8①③④⑦)。償却期間は60ヶ月である。なお、資産調整勘定及び負債調整勘定の償却については、損金経理要件がないことに留意が必要である。また、資産調整勘定を認識している法人が非適格合併により解散する場合又は内国法人の残余財産が確定した場合には、合併の日の前日又は残余財産確定の日の属する事業年度において残額を全て取り崩し、損金の額に算入する(法法62の8④⑤)。
(3) 退職給付債務
法人税法上、退職給付引当金の繰入は損金として認められていないため、非適格合併等により退職給付債務を引き受けた場合にはその取扱いが問題になる。
しかし、非適格合併等により被合併法人等から引継ぎを受けた従業者に対して、将来の退職時に支払う退職給与の額については、非適格合併等前における在職期間その他の勤務実績を勘案して算定する旨を約し、かつ、これに係る負担の引き受けをした場合には、会計上の退職給付債務に相当する金額は、退職給与負債調整勘定として計上することができる(法法62の8②一、法令123の10⑦⑨)。退職給与負債調整勘定に計上された退職給付債務については、上記の退職給付の引継ぎの対象となった使用人が退職した時点若しくは退職給与を支給する時点において取崩し、益金の額に算入する(法法62の8⑥)。
(4) 短期重要債務
非適格合併等により被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、合併法人等が非適格合併等により被合併法人等から移転を受けた事業に係る将来の債務(その事業の利益に重大な影響を与えるものに限るものとし、上記退職給与債務引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除く。)で、その履行が非適格合併等の日からおおむね3年以内に見込まれるものについて、その履行に係る負担の引受けをしたときは、その債務の額に相当する金額として一定の金額を短期重要負債調整勘定として計上することができる(法法62の8②二、法令123の10⑨)。

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組織再編税制研究室

序章

第1章 組織再編手法

第2章 法人税等の取扱い

第3章 組織再編成の取扱い

第4章 欠損金の取扱い

第5章 特定資産譲渡等損失の損金算入制限

第6章 連結納税における組織再編成の取扱い

第7章 その他の税金の取扱い

第8章 租税回避行為への対応

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