事業譲渡
適格判定
事業譲渡については法人税上の適格判定の規定はないため、通常の法人税の個別規定で課税の取扱いを判断する。
事業譲渡の法人税課税の取扱い
- (1) 移転法人の課税の取扱い
- 移転法人が事業譲渡により譲受け法人に資産及び負債の移転をしたときは、譲受け法人にその資産及び負債の事業譲渡時の価額(時価)による譲渡をしたものとして、移転法人の各事業年度の所得の金額を計算する。
したがって、事業譲渡による資産及び負債の移転により移転法人において譲渡損益が発生することになる。
ただし、移転法人と譲受け法人との間に完全支配関係があるときは、事業譲渡の時の価額(時価)により移転する資産のうち譲渡損益調整資産に係る譲渡損益については、いわゆるグループ法人税制により、課税が繰り延べられる (法法61の13②)。 - (2) 譲受け法人の課税の取扱い
- 譲受け法人が事業譲受けにより資産及び負債の移転を受けたときは、事業譲渡の時の価額(時価)を受入価額とする。
- (3) 移転法人の株主の課税
- 事業譲渡の場合、移転法人の株主にみなし配当課税及び譲渡損益課税は発生しない。
なお、事業譲渡前後に解散を実施する場合にはみなし配当が発生する可能性があることに留意が必要である。
第二次納税義務
事業譲渡が行われる場合には、その事業の資産及び負債が譲受け法人に移転する。
しかし、租税については、たとえ、移転法人、譲受け法人双方が債務承継の契約を行ったとしても、譲受け法人から移転法人の租税を強制的に徴収することはできない。
上記のことから、徴収を適正に行うために、一定の要件をもとに、譲受け法人から、移転法人の租税を強制的に徴収しようとするのが、第二次納税義務である(徴収法38、地法11の7)。
- (1) 成立要件
- 第二次納税義務は次の要件のすべてを満たす場合に成立する。
- ① 納税者(移転法人)が、事業を親族その他の特殊関係者に譲渡したこと。
- ② 事業譲渡が租税の法定納期限の1年前の日後に行われていること。
- ③ 事業譲受人(譲受け法人)が同一の場所において、同一又は類似の事業を営んでいること。
- ④ 納税者(移転法人)が、譲渡した事業に係る租税を滞納していること。
- ⑤ 納税者(移転法人)の財産について、滞納処分を執行しても、なお④の租税を滞納していること。
- (2) 納税義務者
- 納税者(移転法人)から事業譲渡を受けた「親族その他の特殊関係者」である
- (3) 納税義務の範囲
- 第二次納税義務の範囲は、主たる租税の全額であるが、その責任は、譲受財産の範囲を限度とする。