現物出資の法人税課税の取扱い
- (1) 現物出資法人の課税の取扱い
- ① 適格現物出資の場合
現物出資法人が適格現物出資により被現物出資法人に資産及び負債の移転をしたときは、被現物出資法人にその資産及び負債の現物出資直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、現物出資法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62の4)。
したがって、適格現物出資による資産及び負債の移転は、簿価により譲渡したものとされるので、譲渡損益は発生しない。 - また、現物出資により取得する被現物出資法人の株式の帳簿価額は、適格現物出資により移転した資産及び負債の簿価純資産価額(株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用を加算した金額)となる(法令119①七)。
- ② 非適格現物出資の場合
現物出資法人が非適格現物出資により被現物出資法人に資産及び負債の移転をしたときは、被現物出資法人にその資産及び負債の現物出資の時の価額(時価)による譲渡をしたものとして、現物出資法人の各事業年度の所得の金額を計算する。
したがって、現物出資による資産及び負債の移転は、時価により譲渡されたものとして、現物出資法人において譲渡損益が発生することになる。また、現物出資により取得する被現物出資法人の株式の帳簿価額は、非適格現物出資により移転した資産及び負債の時価純資産価額となる(法法62①)。
ただし、現物出資法人と被現物出資法人との間に完全支配関係があるときは、非適格現物出資時の価額(時価)により移転する資産のうち譲渡損益調整資産に係る譲渡損益については課税が繰り延べられる (法法61の13②)。 - (2) 被現物出資法人の課税の取扱い
- ① 適格現物出資の場合
・「資産の部」「負債の部」の受入れ
被現物出資法人が適格現物出資により資産及び負債の移転を受けたときは、その資産及び負債の取得価額は、現物出資法人の現物出資直前の帳簿価額(その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額)とする(法令123の5)。
なお、適格現物出資により取得した減価償却資産については中古資産の耐用年数も適用できることに留意が必要である。
・「純資産の部」の受入れ
被現物出資法人が適格現物出資により資産及び負債の移転を受けたときは、次の方法で算出した金額を被現物出資法人の資本金等の額として加算する(法令8①八)。なお、被現物出資法人は現物出資法人の利益積立金額を引継げないことに留意が必要である。加算項目 算式 資本金等の額 移転資産・負債の簿価純資産価額 ② 非適格現物出資の場合
・「資産の部」「負債の部」の受入れ
被現物出資法人が非適格現物出資により資産及び負債の移転を受けたときは、その資産及び負債の受入れは、現物出資の時の価額(時価)を受入価額とする。
・「純資産の部」の受入れ
被現物出資法人が非適格現物出資により資産及び負債の移転を受けたときは、次の方法で算出した金額を被現物出資法人の資本金等の額に加算する(法令8①九)。なお、被現物出資法人は現物出資法人の利益積立金額を引継げないことに留意が必要である。加算項目 算式 資本金等の額 移転資産・負債の時価純資産価額 - (3) 現物出資法人の株主の課税
- 現物出資の場合、適格・非適格に関わらず現物出資法人の株主にみなし配当課税及び譲渡損益課税は発生しない
債権の現物出資(いわゆる「DES」)の取扱い
- (1) 適格現物出資の場合
- ① 現物出資法人の取扱い
適格現物出資に該当する場合には、現物出資法人における債権の帳簿価額で被現物出資法人に譲渡されたものとなるため、現物出資法人において譲渡損益は一切発生しない。
現物出資法人における債権の帳簿価額と被現物出資法人における債務の帳簿価額との間に差額がある場合には、債務消滅損益が発生する。たとえば、現物出資法人がその債権を券面額より安い金額で買い取ってきているような場合では、現物出資により被現物出資法人側で債務消滅益が発生することとなり、この場合の現物出資法人における株式の取得価額は債権の帳簿価額となる。② 被現物出資法人の取扱い
債権の現物出資を受けた被現物出資法人側では自己宛債権を現物出資法人における帳簿価額でいったん譲り受け、負債に計上されている債務と相殺することになる。 - (2) 非適格現物出資の場合
- ① 現物出資法人の取扱い
非適格現物出資の場合は、現物出資の時の債権の価額(時価)で被現物出資法人に譲渡されたものとなるため、債権の帳簿価額と時価との間に差額がある場合には、現物出資法人において債権の譲渡損益が発生することとなる。
ただし、現物出資法人と被現物出資法人との間に完全支配関係があるときは、非適格現物出資の時の価額(時価)により移転する資産のうち譲渡損益調整資産に係る譲渡損益については課税が繰り延べられる (法法61の13②)。
なお、この場合の現物出資法人における株式の取得価額は債権の時価となる。
また、子会社等に対して債権を有する法人が、合理的な再建計画等によりその債権を現物出資した場合の株式の取得価額は、その取得の時における給付をしたその債権の価額となることに留意が必要である(法基通2-3-14)。 - ② 被現物出資法人の取扱い
この場合においては、被現物出資法人側では自己宛債権を時価で譲り受けたこととされるので、債権の時価と被現物出資法人における債務の帳簿価額との間に差額がある場合には、債務消滅損益が発生することとなる。