繰越欠損金の引継ぎ制限及び使用制限の概要
適格合併に該当した場合には、合併法人は被合併法人の繰越欠損金を引継ぐことができる。そのため、繰越欠損金を利用することを目的として、多額の繰越欠損金のある法人を買収し、その後適格合併を行うことにより、被合併法人の繰越欠損金を不当に利用しようとするような租税回避行為が考えられる。
したがって、このような租税回避行為を防止するために、合併法人の合併事業年度開始の日の5年前の日以後に支配関係が生じているような場合において、「みなし共同事業要件」を満たさないときは、被合併法人等の繰越欠損金の引継ぎ制限及び合併法人等の繰越欠損金の使用制限が課されている。
青色繰越欠損金の利用制限の改正(平成28年度改正)
【大法人】
法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度(平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について適用。それより前は9年)で青色申告書を提出した事業年度において生じた青色欠損金額がある場合には、その青色欠損金額に相当する金額は、その各事業年度の欠損金額控除前所得の金額の50%(平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度について は 65%)相当額を限度として、損金の額に算入される。(法法 57①)
なお、一定の経営再建中の法人や新設法人については、この例外となっている。
【中小法人】
中小法人については、欠損金額控除前の所得の金額を限度として、損金の額に算入することとされている(法法57⑪)。
中小法人とは、各事業年度終了の時において次の法人に該当する法人をいう(法57⑪、 58⑥、法令14の10⑥)。
① 普通法人のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの
(注) 次の法人を除く。
1 大法人(次の法人をいう。)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
・ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
・ 相互会社及び外国相互会社
・ 法人課税信託に係る受託法人
2 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人
3 相互会社
4 法人課税信託に係る受託法人
② 公益法人等又は協同組合等
③ 人格のない社団等
(参考)