組織再編の実践ノウハウ株式の集約とは

簡易組織再編、適格組織再編を積極的に活用する

シンプルに検討できる

複数の株主が存在するケースにおいて、たとえば吸収合併を行った場合、「合併比率の算定」「株主総会での決議」を必要とするといった諸手続きが必要となり煩雑です。
そこで、あらかじめ合併を行う前に、株式のすべてを集約させることによって、100%グループ関係をつくっておきます。これにより、無対価再編や簡易合併の活用で、合併比率等の算定や主総会決議を省くといった処理の簡便化が可能になります。また、株式譲渡により株式の集約を行っておくと、将来の再編を見据えて多くの選択肢を残すことになり、将来実行可能性のある組織再編に機動性をもたせることが可能です。
また株式の集約を実施して100%グループ化をしておくと、将来合併や分割などの組織再編を行う場合、原則として「適格」と判定されるため法人税の課税の影響額を考慮せずにすみ、シンプルな方法で検討することが可能となります。このほか、非上場会社では、オーナー一族の意思決定を円滑に行うために集約するケースが多くあります。
「株式の集約」は、「事業の移転」や「資産の移転」に比べると、取引先や金融機関、従業員への対応を検討することはほとんどありません。しかし、100%グループ化をめざす過程の組織再編となることから、「税制上のメリットを受けられる適格組織再編に該当するか」を検討する必要があります。
よって、「株式の集約」を行う場合には、会計・税務への影響や株主対策を中心に検討していくことが重要です。
検討時に押さえておくべきポイントとして、次のものが考えられます。

取引先対策★

株式交換や株式移転を行う場合、債権者保護手続は原則不要です。

株主対策

① 株主総会の開催★★
原則として株主総会で決議(特別決議)を行う必要があります。
② 簡易組織再編の活用★★★
とくに上場会社や株主が多い非上場会社においては、「簡易組織再編を行えるかどうか」がスケジュール上非常に重要なポイントとなります。
例えば親会社の側では、当該親会社の資産額の20%以下の子会社が対象となるような小規模の組織再編の場合、当該組織再編の前後によって親会社の株主に与える影響が軽微なため、親会社の株主総会は省略することができます。
簡易組織再編では、親会社の株主総会が省略できる点でスケジュールの短縮化、事務処理の簡便化が図られるため、要件を満たす場合は積極的に活用を検討するとよいでしょう。ただし、省略されるのは株主総会のみであり、その他の手続きが省略されるわけではないので注意が必要です。

こちらもご覧ください →株主総会を省略!?「簡易組織再編」とは

③ 略式組織再編
親会社が子会社の議決権の90%以上を保有している場合等においては、子会社の株主総会による決議を省略することができ、これを略式組織再編といいます。
上場企業の子会社等において、子会社の株主は、親会社である当該上場企業1 社のみの場合がほとんどです。そのため、略式組織再編を選択するよりも、会社法319条のいわゆる「みなし総会(書面決議)」を行うことで、通常の手続きを実施したほうが簡便である場合が多く、略式組織再編は簡易組織再編に比べ、それほど広く採用されていません。

会計・税務への影響

適格組織再編の検討★★★

100%グループ化をめざす組織再編の場合、適格組織再編に該当するかどうかによって、税務上、時価課税されるかどうかが決定します。そのため、100%グループではない場合は、組織再編を行う際に適格要件を満たすかどうかの検討を行うことが必要です。
株式交換、株式移転についてはそれぞれ適格要件を定めています。「税制適格・非適格」「その他」の組織再編方法のいずれかを選択することにより、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかを事前に十分検討することが重要です。
株主が同族株主で構成されているなど、100%グループ内の組織再編であれば、金銭等の交付がない等一定の場合、「適格組織再編」となり、資産・負債は法人税法上の帳簿価額により引き継がれ、譲渡損益は繰延べられます。
それでは、次項より、株式の集約方法である株式譲渡、株式交換、株式移転のそれぞれについて事前検討に必要な取扱いをみていきます。

●株式集約方法ごとのメリット・デメリットのまとめ

メリット デメリット
株式譲渡 ・原則、取締役会の決議のみで済む
・売手に売却資金が入る
・買手が買取資金を用意しなければならない
・売手に売却額に応じた税金が課税される
株式交換 ・すべての株主から強制的に株式を取得することによって100%親子会社関係を構築することができる
・親会社側で資金を用意することなく、親子会社関係を組成することができる
・株主総会の特別決議が原則必要
・反対株主に対して株式買取請求権が発生する
株式移転 ・すべての株主から強制的に株式を取得することによって100%親子会社関係を構築することができる
・親会社側で資金を用意することなく、純粋持株会社を新規設立することができる
・株主総会の特別決議が原則必要
・反対株主に対して株式買取請求権が発生する
自己株式の取得 ・代金の一部が配当とみなされるため、売手が会社の場合には受取配当等の益金不算入により売却による税負担を軽減することができる
・発行会社が買取資金を負担するため、株主の資金負担が少ない
・発行会社の純資産が悪化する
・分配可能額の規制を受け、分配可能額の範囲内でしか自己株式の取得を実施できない
・原則株主総会特別決議が必要

>>>NEXT 株式譲渡

関連するコラム記事

持株会社化のセルフ診断
無料診断・相談会

組織再編の実践ノウハウ

第1章 企業(組織)再編の基本を押さえる

第2章 組織再編の事前検討の実行① 株式の集約

第3章 組織再編の事前検討の実行② 事業の移転

第4章 組織再編の事前検討の実行③ 資産の移転

第5章 組織再編の事前検討の実行④ 再生(第二会社方式)

第6章 組織再編の手続きを確認する

第7章 組織再編後に行う3つのこと

第8章 各種再編手法のケーススタディ

持株会社の相談窓口

持株会社化や組織再編に関するお悩みやご質問は、みらいコンサルティングの相談窓口までお気軽にご相談ください。

お電話でのご相談

メールでのご相談

 ご相談フォーム