すべての株主から強制的に株式を取得して100%グループ化を実現する
株式交換で100%親子会社関係をつくれる
株式交換を実施することによって、100%親子会社関係をつくることができます。また、兄弟会社だった会社を、親子会社の資本関係に整理する手法としてしばしば用いられます。
●株式交換
株式交換のメリット・デメリット
株式交換は、親会社が子会社の株式を取得することにより、「株式の保有割合を増加させるという点」で株式譲渡と同じです。ただし、株式譲渡が株主から直接株式を購入するのに対して、株式交換は「株式譲渡に反対する株主や、所在が不明な株主などが保有する株式」を含めたすべての株主から強制的に株式を取得することによって、100%子会社化を実現できるメリットがあります。また、株式譲渡と異なり株主側で資金を用意することなく、100%親子会社関係を構築することができます。
デメリットは、株式譲渡と比べると事前検討や手続きにかなりの時間と労力を必要とすること、反対株主からの株式買取請求があった場合はこれに応じる義務があることです。
反対株主の株式買取請求権とは、組織再編に反対の株主が、会社に対して株式の買取を請求できる権利です。
また、株式交換を行う場合、原則として株主総会の特別決議が必要です。
●株式交換のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・すべての株主から強制的に株式を取得することによって100%親子会社関係を構築することができる ・親会社側で資金を用意することなく、親子関係を組成することができる |
・株主総会の特別決議が原則必要 ・反対株主に対して株式買取請求権が発生する |
スケジュールの検討① スケジュール概要★★
株式交換のスケジュールの概要は次図のとおりです。
※ 完全子会社が新株予約権付社債等を発行している場合には、1 か月以上の債権者保護手続き(官報公告および債権者への個別催告等)が必要となる。
なお、株券を実際に発行している会社の場合には、1か月以上の株券等提出手続き(株主への公告・通知)が必要となります。
株式交換の場合、原則として債権者保護手続が不要のため、合併などと異なり、手続き開始から効力発生までは1か月程度あれば、ほとんどの場合で実行可能です。
スケジュールの検討② スケジュール検討事項★★
スケジュール上、事前に検討すべき事項は次のとおりです。
●事前に検討すべき事項
効力発生日までの日程 | 効力発生日まで少なくとも 1 か月は必要※ |
株式交換契約書の内容の検討 | 株式の交換比率、増加資本金額等の検討、決定 |
株券発行の有無 | 子会社が「株券発行会社」であるときは、原則と して、株主に対して公告等の手続き( 1 か月以上) を要する |
簡易株式交換の適用の可否 | 親会社の純資産の20%以下の場合、簡易株式交換を適用できる可能性あり |
※株券を実際に発行している会社や、子会社が新株予約権付社債を発行している会社などは、債権
者保護手続きが必要であるため、手続き着手から効力発生日までに、最低2か月程度が必要となる。
スケジュールの検討③ 簡易株式交換★★★
株式交換手続きにおいて、親会社が子会社の株式と引き換えに交付する親会社株式等の対価の合計額(株式交換効力発生時点の額)が、「親会社の純資産額(株式交換契約時点の額)の20%以下」の場合、株式交換に関する親会社の株主総会承認決議が不要となります。
上場企業や株主が多数存在する会社など、臨時株主総会を開催することに多大な労力とコストの負担が予想される場合、簡易株式交換の採用を検討することが重要となります。
簡易株式交換により、株主総会の招集や開催等が省略でき、総会開催の準備や招集通知の期間など、スケジュールの大幅な短縮も可能となります。
ただし、次の場合には、原則的に簡易株式交換の手法を選択することはできません。特に、親会社が非公開会社の場合は簡易株式交換は原則的に選択できないことには注意が必要です。
●簡易株式交換が利用できない場合
株式交換の実際の再編時において、差損が生じる場合 |
完全親会社が「非公開会社」(いわゆる「株式譲渡制限会社」)で、かつ、その株式交換の対価として完全親会社の譲渡制限株式が交付される場合 |
株主に対して株式交換の通知を行い、株主から一定数以上の株主から反対の通知が送付された場合 |
上記のいずれかに該当する場合には、必ず株主総会において「株式交換実施の承認」を得なければなりません。また、実際の組織再編時に会計上「差損」が生じてしまうと簡易株式交換が採用できないこととなるため、事前に概算額の予測を行い、「差損」が発生しないかどうかを検討する必要があります。